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携帯サイト。

えー。今現在、今年で4年目になろうかという携帯サイトを持っているのですが、そろそろコンテンツをこちらに移行して閉鎖した方が良いのかなーと思い始めています。

というのも、先ず携帯からの編集が大変というのと、字書きサイトだったので、一応PCの方が作業が捗るんじゃないかと思ったのがきっかけです。絵を上げるならpixivもありますし、文を載せるのはこっちでも別に良いような気がしたので…www


とりあえず試験的にやってみようじゃないかという事で、ACfaのラインアーク攻防戦を題材にしたブツを追記に投下。感想とかいただけると嬉しいです。



-シロイセンコウとマヨイネコ-




『…再起動だと!!?』

奴のマーカーは消失した。イヤ、自分の手で消したはずだった。
AMSを介して脳に直接情報を伝えるモニターが、『DANGER!!』の文字を絶えず表示している。

『チッ…流石に伊達ではないか…ホワイト・グリント!』

火花を散らし、再び戦闘態勢を取るホワイト・グリントに機体を向け、オーバードブーストを起動するステイシス。『アナトリアの傭兵』の息の根を、今度こそ止める為に。

『させるか!!…っ!?』

それに一瞬遅れ、『白い閃光』を護る為に飛び出す『迷い猫』に向けて、弾をバラ撒く。今この時に於いては、それが自身の役割であった。

「貴方の相手は私です。…ストレイド。」

『迷い猫』を静かに見下ろす、フラジールの姿。止まっていた戦場の時間が、また動き出した。



□■□■□■□■□■□■□■□■


『相手の機動に付き合う必要はない、隙を見付けて一気に畳んでしまえ。出来る限りホワイト・グリントの援護を優先するんだ。』

左耳に着けたインカム越しに、忠告が聞こえる。
自身を見出だし、これまで共に生きてきたパートナー、セレン・ヘイズの声は、心なしか怒気を孕んでいるように感じた。
うろちょろする小バエを叩き落とせない自分に、イラついているだろうとは判っていた。
…だからといって、簡単にケリが付く相手でもないのは、彼女も重々承知のはず。
ひとつ溜息を吐いたかと思うと、再び声が聞こえる。

『解っているだろうが、焦って落とされるような事はするなよ?これまでの苦労が無駄になる。』

「…ああ。解ってる。」

…一応、心配はしてくれているらしい。あれで、結構優しい所はあったりする。
ただ、今そんな事を考えている余裕が有ろう筈もなく、眼前を舞う異形の機体を落とす為の所作だけを、AMS越しに機体へ伝える。

一、二、三、四…五。クイックブーストの切れ間を狙い、次々と右腕のライフルを発砲する。
しかし、それまでの戦闘ダメージにより、FCSと腕部のレスポンスにズレが生じたらしく、銃弾はプライマル・アーマーを掠めるだけで、中々決定打を与えられない。
だがそれは相手も同じらしく、相変わらず付かず離れずの距離を保ったまま、弾幕を張っていた。

「くっ…何とかしてトップを取れれば…!」

切っ掛けがなければジリ貧になる。そうなれば、格納しているブレードの分を抜いても、総火力で負けるこちらに勝機は見えない。
だからこそ、変化が欲しかった。…戦局を変える、大きな変化が。



□■□■□■□■□■□■□■□■


『お願い、すぐに離脱して!』

フィオナの声が聞こえる。作戦の進行より、ただ一人の傭兵の身を案じる。
それが戦場に於いては愚かと呼ばれる事であったとしても、嬉しい言葉には違いない。
もっとも、自身の繰る『ホワイト・グリント』がラインアークを護る最大の戦力であることを考えれば、無理をおして前線に出続ける事こそを、愚行と呼ぶべきなのだろうが。
…それでも、退く事は出来なかった。

「…っ駄目だ! 今彼を一人にする訳には行かない!」

ラインアーク直下。
損傷の激しい機体を無理矢理再起動させ、AMSによる神経接続を絶ったままでステイシスと渡り合う。
斜め上方から飛来するミサイルがプライマル・アーマーを削り取り、アサルトライフルとレーザーライフルの波状攻撃が、純白の装甲を掠めてゆく。
始めは互角に見えた戦いも、『AMSによるサポートの有無』が、戦力差として如実に現れ始めていた。



―――元来ネクストというのは、マニュアル操作を前提とはしていない。



『リンクス』と呼ばれる傭兵、そして、『ネクストAC』。
これらの戦闘能力がAMS適正に大きく依存している事は周知であり、これのサポートがなければ、ネクストACといえど所詮は『プライマル・アーマーを持つノーマル』程度でしかなかった。


『そろそろ年貢の納め時だな!』

「!?」

ノーロックで放たれた、こちらを狙う事のないPMミサイル、それに気を取られたのが仇となった。
後方からのロックオン・アラート。振り向いた時、既に銃口はこちらに向けられていた。



□■□■□■□■□■□■□■□■


「終わりだ。」

そう言ってトリガーを引き絞る。今度こそ、アナトリアの傭兵の最期だと、そう確信していた。
だが、何かがおかしい。
奴のパーツの形状に不吉な違和感を受け、機体を無理矢理後退させようとしたが遅かった。


―――カメラアイを防護するように降りたシャッター。
フレームの各所から迫り出している、プライマル・アーマーの整波装置。

ステイシスの前面からバーニア炎が噴き出す瞬間。
カラードランク1、オッツダルヴァ。彼の瞳に映ったのは『目を覆うほどの眩い光』。


薄緑色のコジマ粒子、その圧縮解放に因る大規模爆発。
アサルトアーマーによるカウンターアタックにより、海面が大きく波打つ。

「…クソッ…リンクス戦争の英雄というのも、あながち嘘では無いらしいな…!」

アサルトアーマーによるコジマ粒子の干渉、それに伴うプライマル・アーマーの減衰現象を見せるステイシス。
直撃は免れたとはいえ、相殺に半瞬遅れたツケは確実に機体に回っていた。
装甲に施された深藍の塗装は剥がれ、銀色の鈍い光をフレームが放つ。
奴に向けていたレーザーライフルは銃口が拉げ、最早使い物にはならない。

残された武装は、右背のPMミサイルが4発と、総弾数の約半数を撃ち切ったアサルトライフルのみ。
…反応が後一瞬でも遅れていれば、冗談抜きで水没していたな。そう苦々しげに呟き、カメラの回復を待たず、レーダーを頼りに右手のそれを二、三発、発砲する。

(…それにしてもあの動き…。流石に、メルツェルの交渉には乗ってはくれなかった、という所か。…だが、それならそれでやりようは有るさ。)



□■□■□■□■□■□■□■□■


『AP60%減少!何をしている!?』

ジリ貧。正に予想通りという訳だ。
大きな瞬発力の差により十分な射撃精度を得られず、ブレードによる格闘戦を狙う事も叶わず。
決定的な打撃を与えられる事もなく、ただただ被弾率だけが増加していた。

「左のサイドブースターがおかしいんだよ!?…くそっ、貰い過ぎたか…!!」

機体の被弾状況を画面に映す。
見れば、左肩前面にダメージが集中しており、戦闘機動は不可能な状態にあった。
クイックブースト用のブースターだけならともかく、関節部分、駆動系にまでダメージは及んでおり、最早左腕は使い物にならない。

その上、肩部ハードポイントへの接続も断たれているらしい。
ECMを待機状態にしてみた所で、左肩のそれはウンともスンとも言わないのだから。
…どうりで、左肩から先が無くなったような違和感がある訳だ。
舌打ち所の話ではなかったが、それでもこのダメージが、反撃の為の布石になるのではないか。そんな考えが脳裏をよぎった。

『…意外と呆気ないものですね。PAが無ければ、やはりその程度の耐久性ですか。』

回避行動が制限される左側へと回り込み、執拗にチェインガンを撃ち込むフラジール。
予想通り、クイックターンを使えないストレイドの左腕部にはダメージが集中し、左腕は既に『付いているだけ』だと確信を得た。

この状況が続けば勝てる、その自信が彼にはあった。あくまで『状況がこのまま』なら。



『被弾しない事』を根底に置いた、軽量フレーム。その中でもフラジールは一際回避に特化した機体である。たかがライフルとはいえ、直撃=致命傷に成り兼ねないのだ。



しかし、ダメージが危険値になろうとも、今回ばかりは途中放棄は許されない。企業連にとって、このミッションはラインアークを制圧出来るかどうかの分水嶺となる。
ホワイト・グリント、そして共働しているストレイドの撃破は最優先事項であった。



「戦い方を変えてきましたか…。」

死角に回られる事を嫌ったか、連続してクイックブーストを噴かしフラジールの直下を潜り抜けるストレイド。
左腕部のブースターが全て死んでいるにも関わらず、右腕部のそれを巧みに使い背中を隠すその機動は賞賛に値する。
実際、彼の戦闘能力は低下こそすれ、決して失われてはいなかった。

「…ですが、機動性はフラジールの方が格段に上です。」

だがそれも、自分より遅い相手にのみ通用する戦術であって、フラジール相手では役には立たない。
その絶対的な自信が、攻勢の維持を決定付けた。



□■□■□■□■□■□■□■□■


『…掛かった!』

オーバードブーストを起動し、一気に距離を詰めるフラジール。
瞬く間に距離は縮み、相対する二機の距離がマシンガンの射程に入った瞬間、OB炎を纏ったストレイドが視界から消えた。
レーダーを確認するが、そちらに反応はなく、慌てて機体を反転させるが、そちらにも機影は見えない。
…その時初めて、飾りにしか見えなかった肩武器がECMだった事に気付かされた。

「しまっ…!?」

その直後、背後に突然の被弾警告が現れる。
下方からのアサルトライフルの速射により、四基あるメインブースターの内、最も右側に据えられた一つが機能を失う。
体勢を崩したフラジールであったが、強引なクイックブーストによりFCSの補足を逃れる。
そして被弾状況の確認。急所を幸いにも外れたらしく、直ぐさま反転し、隙を見せたストレイドに弾丸の雨を降らせる。
コアを庇うように上体を捻るストレイドであったが、ダメージの蓄積した左肩から火を噴いたかと思うと、そのまま着水。
そして、大きな爆発とともに水没した。

「………ふぅ。これで終わりですか。…重要度の高いミッションだと言うから、どの程度かと思えば。」

水面下でのアサルトアーマー使用により立ち上る水柱。ECMによって消えたIFF。
フラジール一機を油断させるには、これで十分だった。
海中で武器を持ち替え、再びクイックブーストで背後から飛びかかる。


―――勝負は一瞬。



―――当たらなければ、死ぬだけ。至極単純なギャンブルだ。



「…な…っ…」

ブラックアウト。
そしてAMSが、理解不能な文字列を脳内に焼き付かせる。頭を砕かれそうな痛み。
唯一つ解っていたのは、乗機フラジールが胴体を『真っ二つ』にされているという、その事だけであった。

「…AMSから…光が、逆流する…!!?」



□■□■□■□■□■□■□■□■


『ギャアアアアァァァァァァァッ!!!?』

ジェネレーターのオーバーロードによるコジマ爆発。
そして、機体そのものの大破によって起こった爆風に煽られ、ストレイドのフレームが海面へ吹き飛ばされる。

「ぐぁ、くっ!?…」

爆発の衝撃がコックピットを大きく揺らす。

「…はぁっ、はっ…はぁっ…」

息も絶え絶えになり、関節が悲鳴を上げる。
このまま眠ってしまいたい、そう考え出した青年の耳に、些か不安そうな声が聞こえる。

『…無事か?』

「…なんとか、鞭打ちにはならなくてすみそうだ…。」

AMS制御により、かろうじて水没は免れたが、もはや戦闘の継続は絶望的に見えた。
装甲とプライマル・アーマーは消耗、減衰し、チェインガンの攻撃を受け続けた左腕は既に、肩部ジョイントから先を失っている。
武装も先程の一戦で大半を失い、残ったのはECM発生装置とレーザーブレード、近接戦用の散布型ミサイル位しかなかった。

『…そうか。残るはステイシスだが…行けるか?』

「それがミッションなんだろ?…だったら、やるだけだ。」

満身創痍の機体の向きを変え、ペダルを再び踏み込む。ホワイト・グリントの援護に向かう為に。



□■□■□■□■□■□■□■□■


AMS制御の断たれたホワイト・グリント。
アサルトアーマーにより、装甲、プライマル・アーマーに大きな減衰を受けたステイシス。
勝敗は見えていたはずだった。

「メインブースターがイカレただと!?狙ったか…!!」

垂直推力を生む唯一のブースターを失い、ただ落下してゆくステイシス。
ペダルを踏み込んだ所で火は入らず、クイックブーストによる回避行動も、同高度に上がれない状況の解決にはならなかった。

…厳しい状況だが、ここでケリをつけてしまわなければならない。ストレイドに合流される訳にはいかないのだから。
そんな事になれば、『今後の計画』が台無しになってしまう可能性も捨てきれない。



―――『オッツダルヴァが死亡したと思わせる事』、そして『ホワイト・グリントの撃破』。





―――それが、このミッションで課せられたノルマ。私に失敗は許されない。



オーバードブーストを展開し、トップアタックを仕掛けるホワイト・グリント。
拡散ミサイルを撃ち尽くし、残った両腕のライフルを併用してステイシスを追い込む。

左右及び機体前面のブースターを使い、回避運動を取るステイシス。
海面近くでのクイックブーストにより発生する微量の揚力で息を繋いでいたが、水没も時間の問題であった。
いくらアサルトライフルの弾薬が残っているとは言え、ほぼ直上にいる相手を落とすには足りない。ならば。
…相手を誘う必要がある。

ライフル弾を連続で被弾し、ステイシスの体勢が崩れた。それを見て、一気に距離を詰める。
この戦いの幕を下ろす為に。

「今ならっ…!」

『…勝てると踏んだか?…早計だったな、ホワイト・グリント!!』

ステイシスの右肩、PMミサイルが形状を変えた。

OBによってPAを消費していたとはいえ、被ロックオンを示す警告が無く、影響は無いと思っていた。
確かに狙われていないはずだった。
しかし次の瞬間、PMミサイルの直撃による衝撃がコックピットを襲い、度重なるダメージにモニターは消え、ホワイト・グリントの戦闘能力は失われた。
そして、『彼』の意識もまた、暗闇の底へと堕ちてゆく。

ホワイト・グリントが飛び込んできた瞬間、右肩のランチャーから、最後の4発が放たれる。
ロックオンなど必要はない。ただ、射線に入ったそれを撃ち落とすだけなのだから。
放射線状に放たれた弾頭はホワイト・グリントの左腕、両足を奪い、OBユニットを貫いた。
そのままバックブースターを噴かし、コアに銃弾を撃ち込む。
万が一の可能性すら、消し去る為に。



□■□■□■□■□■□■□■□■


「セレンッ!!?」

『落とされたのか!?』

レーダーから、ホワイト・グリントのIFFが消失する。
そして、残った一つも、たどり着く頃には戦闘能力を失い海中に没していた。

『…ホワイト・グリント戦闘不能、及び…ステイシスの戦線離脱を確認。ミッション終了。…結局、お前一人か…。』

「…そうだな。…なあ、」

辺りが蒼に染まり始めたラインアーク。



『…これで…何か変わるのか…?』



その静寂の中で『マヨイネコ』の瞳だけが、静かに輝いていた。



□■□■□■□■□■□■□■□■


『…御協力、ありがとうございました。………ですが、ラインアークは、これで終わりかも知れませんね…。』

淡々とした、声。スピーカー越しに、ストレイドへと向けられている。

「そう…かもな…。…貴方は…どうするんだ?」

『…っ……。』

「…すまない。聞かなかった事にしてくれ。」

答えは、なかった。

そのかわり、…ただ微かに、押し殺された鳴咽が聞こえていた。



□■□■□■□■□■□■□■□■


「セレン。ホワイト・グリントの反応は…?」

動くモノのないモニターを眺めながら、おそらく同じようにレーダーを見て居るであろうセレンに呼びかける。
別に、反応がある事を期待している訳じゃなかった。
ただ、聞かずには居られなかっただけなのだから。

『…金属反応だけなら、確認はしている。…引き上げるつもりか?』

喜んでいいのか、悲しむべきなのかは、判らない。
ただ、このまま冷たい水の中にさらされ続けるよりは、幾分かマシかと思えた。

「…」

…呆れるな、お前の甘さには。インカムからため息が聞こえる。
しかし、声音に怒気はなかった。

損傷の激しい機体で、ネクスト一機を引き上げる作業は、予想よりも遥かに手間取った。
何せ片腕を失い、他の関節部のダメージも大きい。下手をすれば、腕ごと落として終わりになるのだから。

そうして引き上げた『彼』の損傷は余りにも酷く、左腕と両脚を失い、背部OBユニットをもがれ、形の残るコアでさえも、大きな傷を負っていた。

「…っ……生体、反応、は…?」

その声に答える者は無く、彼はただ静かに、ホワイト・グリントの亡骸を地面へ降ろす。

『…リンクス。……一つ、お願いがあります。』

言葉を失う彼の耳に、フィオナ・イェルネフェルトの声が聞こえた。

「――――どうする、セレン?」

『…私は別に構わんさ。お前の好きなようにすればいい。』

私を、彼の所まで連れて行ってもらえますか。そう言った彼女の声には、悲壮な決意めいた物が感じられた。だから、引き受ける事を躊躇った。彼女の望みを聞くべきなのか、断るべきなのか。…どちらを選んでも、ハッピーエンドにはならない事は理解していた。勿論理解しているだけでは、決して足りない事も。

―――選択を迫られたのは、他でもない『自分自身』なのだから。



「…でも、コジマ汚染は」

『構いません。…どのみち、余り長生き出来そうにありませんから。』

フィオナの達観に満ちた言葉。二人の関係を知らない彼が疑問符を浮かべるのも、仕方のない事であった。

「…?」

『……アナトリアの傭兵、か。お前が助けたんだったな…あの男は。』

『彼を助ける時に、私の防護服を貸しましたから。…元々、汚染済みなんですよ。』

「…随分、饒舌なんだな。」

『今更…隠す必要なんて。』

もう、終わった事。…確かにそうなのかも知れない。ラインアークを護る戦力は失われ、直に彼等は没するだろう。
企業連にとっても、既に失われた、ホワイト・グリントを駆るリンクスが誰であったのかなど、どうでも良い事である。

『で、お前はどうする?…余り悩んでいる時間はないぞ。』

「……わかった。引き受けるさ。」

『…ありがとう。』



□■□■□■□■□■□■□■□■


ハイウェイを行くストレイドの掌の上、風に髪を揺らす人影。モニターに映るその姿を一瞥し、少しスピードを上げる。

「…リンクス。少し、聞きたい事があります。…答えてもらえますか?」

耳障りな音量のノイズが聞こえる。どうやら、外部音声に切り替えたらしい。暫くその雑音が鳴っていたが、ようやく調整が終わったのか、若い男の声が聞こえてきた。

『…俺に答えられる事なら。』

「っ…!?」

慌てて耳を塞ぐ私の姿を見たのか、またもやノイズが聞こえてくる。再び音量を調整しているらしい。『あの人』もそうだったが、この青年も戦闘以外では些か間が抜けた部分があるらしい。

『すまない。…それで、聞きたい事って?』



□■□■□■□■□■□■□■□■


貴方は、何の為に闘うのですか?…一度も、考えた事など無かった。ただ、『死にたくなくて』…リンクスとはいえ、所詮は使い捨ての傭兵。自身が『駒』の一つにしか思えなかった。他に、考えられるならば。…恩返し、とでも言えばいいのだろうか。『彼女』に拾われていなければ、今頃は何処かで野垂れ死んでいた可能性は高い。何の社会的庇護もない孤児が生きてゆける程、地上は綺麗な場所ではなかったのだから。

「…わからない。」

『…そう、ですか。』

「貴方達は、どうなんだ?」

『―私達―、ですか…。』

そう呟く彼女は、少し、寂しそうな目をしていた。



□■□■□■□■□■□■□■□■


「…どうしてでしょうね。私は…良くわかりません。…ただ、」

思いを語る事を、少し、躊躇った。『あの人』が護りたいと願ったモノ、それを目の前の青年が同じく護りたいと願うのか、もしくは壊す側になるのか。今の私には量れなかった。今の彼は、ただ生きる事を望み、戦っている。…彼には『拠り所』が無かった。

『Strayed』

彼がその名前を捨てるには、もう少し時が必要だろう。…それならば、『あの人』の気持ちに、少しだけ触れてみるのも良いかもしれない。それが、『戦う理由』を見つける事に繋がれば…『あの人』と肩を並べてくれた青年の為になるのなら。



…私は、『彼』の想いを託そう。



―――あの人は…『護りたいモノ』の為に、銃を取りました。



□■□■□■□■□■□■□■□■


『……そうか…。』

「………。」

果たして、彼に届いたのだろうか。しばしの沈黙の後、声が聞こえた。

『…少し、考えてみるよ。…戦う理由。』

「…そうですね。」



□■□■□■□■□■□■□■□■


『ホワイト・グリントに接近。…降りる用意はしておけ。』

「ああ。……フィオナさん。もうすぐ、ホワイト・グリントに接触する。」

『わかりました。』

その言葉通り、数分もしない内に目的の場所に辿り着いた。滴る水滴に、月明かりを映し煌めく純白の亡骸。
『彼』が護ろうとしたモノ、それが何なのか。フィオナ・イェルネフェルトの言葉を聞いて、その答えに少しだけ…ほんの少し、近づけたような気がした。

「足元、気をつけて。」

『はい。』

コアに寄せた腕から、慎重に『彼』の元へと近付いてゆく。覚束無い足元、悲しげな後ろ姿。いてもたっても居られなくなり、コックピットハッチの開放スイッチに手を伸ばした、その時だった。

「あの…やっぱり俺も」

『来ないで下さい。』

冷たい制止の声が、夜の闇に消える。

「でも…」

『放っておけ。』

「…セレン?」

『…最期の時くらいは、二人きりにさせてやろうじゃないか。…私達に出来るのは、どうせその程度だ。』

「………………。」

苦虫を噛み潰したような表情のまま、グリップを握り締める。『二人』に背を向けたストレイドに向けて、ホワイト・グリントの通信機から、ノイズにまみれた最期の通信が入る。



―――ありがとう―――



□■□■□■□■□■□■□■□■


「………ごめんなさい。…ずっと、無理…させちゃったね。」

冷たい手をそっと握り締め、囁く。…その声に、答えるものはいない。

「…―――――。」

彼の名を呼ぶ。二度と答えてくれる事はないのだと知りながら。

「今まで、ありがとう。…私は、貴方の力になれたのかな…っ…!?」

肺に強烈な痛みが走る。…どうやら、この辺りが潮時らしい。
どちらにせよ、この戦いが最後だった。低いAMS適正による精神負荷に、高濃度コジマ汚染。本来ならばネクストに搭乗する事すら危険視されていた。勝利した所で失う物はあっても、私が得る物など何一つ無かったのだ。

それに、私も。…周りの制止を振り切って『彼』を助けたツケが、今更回ってきたらしい。コジマ汚染により身体機能は衰弱し、どのみち長くは生きられない躰となってしまっていたのだから。

「どうして……あの時、止められなかったんだろう…。」

残り少ない時間を、戦いなど忘れて、二人で使うべきだったのではないか?…やはり無理にでも、戦いから離れさせるべきだったのではないか?いくら後悔した所で、過去に遡る事など出来はしない。それでも。

「…もう、戦わなくていいの。全部、おわったから…。……ね。」



――――――おやすみなさい。



□■□■□■□■□■□■□■□■


『戦う理由…か。』

傷ついた機体をガレージに仕舞い、コックピットを離れる。普段は耳に痛い整備士の愚痴も、この時ばかりは耳に入らなかった。

「フィオナの言葉、…気にしているのか?」

「セレン…。」

少し大きめのマグカップを、二つ持って現れるセレン。その一つを受け取り、まだ熱い珈琲に口を付ける。人間というのは、気が滅入るだけで此程までに身体的な欲求が消えるらしい。…結局、それ以降口をつける事もなく、カップはそのまま、テーブルの上に置かれていた。

「……気にするなって方が無理な話だ。」

「…まあ、それもそうだな。だが。」

「え」

不意に頭を引き寄せられ、彼女に抱かれる。…人の温もりに心が安らぐ事なんて、今思えばあれが初めてだったのかも知れない。耳元に寄せた唇から、優しい言葉が聞こえた。

「…今はゆっくり休め。与えられた全てを一度に背負える程、お前の背中は大きなものじゃないだろう…?」

「…。」

「焦る必要はないさ。…いずれ、自分の足で進む時は来るのだから。」

「…………ありがとう。」

「気にするな。…それが私の役目だからな。」



微睡みの中、最後に聞こえた言葉は。





――――…お前には、あんな終わり方はさせないさ。





これまでで一番、優しい声をしていた。
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