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理想郷-Arcadia-

コミックマーケット84、お疲れ様でしたー。自身は現地入り出来なかったのですが、参加させて頂いた『TOHORED CORE 6』はお手に取って頂けたでしょうか? 色々な方が参加されていますので、それらに負けぬよう微力ながら花を添えさせて頂きました。

と言うわけで、現地で手に入れた方も、通販で手に入れたという方も、よろしければ彼女の『その後』に少しだけお付き合い下さい。



「なあ、勇儀」
 とある妖怪退治を生業としている巫女の神社、その瓦に腰を下ろし、舞い散る桜に目を細める。淡い栗色の髪、柿の木のように捻れた角を生やした鬼の少女は問い掛けた。
「私は、アイツを殺すべきじゃなかったのかもしれない」
「どうしたんだ、藪から棒に」
「つい二、三日前、からくり使いの人間とやりあった。とても大きなからくりに乗り込んで戦うんだ」
「へえ」手にした盃を傾げ、勇儀と呼ばれたそれは薄ら笑いを浮かべた。
「強かったのか」
「ああ。お前の盃が要らないだろう、って程度にはね」
 その言葉に、小さく反応を見せた。
「……それは残念。萃香がそこまで言う相手だ、さぞかし腕がたったんだろうな」
 それで? と続けて萃香と呼ばれた少女に問う。人間一人を勝負で殺したくらいで罪の意識に囚われるタマじゃないだろう、そして、お前はその殺し合いを楽しんだんじゃないか、と。
「……愉しかったよ。ここ暫く忘れてた、紙一重ってのがあんなに心躍るなんてね」
「だったら」
「だけど私は、死にたがりを殺してやるために戦ったんじゃない」
 アイツは笑って逝った。勝手に心残りを晴らして、勝手に消えたんだ。そう言った少女の瞳は滲んでいた。元々、友人が気紛れで呼び寄せた存在であり、心残りを晴らすために彼女を選んでぶつけ。からくり使いを悔いなく逝かせるためにお膳立てされた戦いなのだから、その男が満たされれば。
「それで呆気なく終わり」
「……」
「殺るか殺られるかじゃない。私がそいつを殺して終わるように決まっていた。そういう戦いだったんだ、アレは」
「だから、か?」
 小さく頷く。気に食わない、と。改めて隣の小さな少女の気質に思いを馳せる。彼女は昔から『真剣勝負』以外を、痛みや死を伴わない勝負を嫌っていた。
 そしてそれは、萃香と勇儀との間にある、明確な壁でもあった。
「でも、そうだな。多分私じゃあ駄目だったんだろう」
「どうして」
「お前が直接やりあって、殺すまでムキになる相手なんだろ? だったら駄目だ」
 私は途中で手を止めてしまうよ。そう言ってばつが悪そうに笑った。
「まだ底が見えないと判った時点で殺す事はしないし、尚更底を見ようと覗き込んでしまう。今のソイツにとっての『最高』じゃあ、私は物足りないんだよ」
「……まるで私に余裕がないみたいな言い方するね」
「そうかい? 何にせよ、本人が気付いていない余地を見せちゃ、余計に心残りが増えてしまうだろ?」
 そしてそれは、そいつを幻想郷につれてきた奴の思惑にそぐわないし、外来人を留まらせ、幻想郷を乱すことにも繋がる。向いてなかったんだよ、そもそも。
 手にした盃に口付け、続けようとした言葉を酒と一緒に流し込む。
「それに、だ」
「……なんだよ」
「そのからくり使い自身は、負けて死ぬために戦った訳じゃないだろ? それとも、腕がたつだけの、単なる死にたがりだったのか」
「それ、は」
 断じて違う。そんなことは戦った自分が一番良く分かっていた。
「考えるまでもない話じゃないか。実力差や性格上の理由から負けて死ぬことが決まっているのと、端から死ぬ為に戦うのとは、全く違う。そいつ自身、死を悟った部分はあるだろうけどね」
「……手を合わせた相手との実力差が判らないほど、自惚れちゃいなかったよ」
 少しばかりか、酔いが醒めてしまっただろうか。ふと考え瓢箪に口付ける。しみったれた話は好きではないし、何より本気でやりあった相手を悪し様に言うのは趣味じゃない。
 それなのに、旧来の友を相手に愚痴を聞かせてしまったのは、やはり罪悪感からなのだろうか。遠慮の一切も必要とせず戦える外界の人間を、易々と失ってしまったからだろうか。いくら考えたところで答えは出ず、再び瓢箪の酒を煽った。今宵の酒は不味くてならないが、それでも、飲まずにはいられなかった。

「……エース。そっちでの理想郷は見つかったか? 私は暫く、お前以上には逢えそうにないよ」
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