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Sweet white

久し振りの掌編更新。
今回はホワイトデーネタとなっており、御月と優希以外にも数名キャラクターが登場しています。



「なあ、お前ホワイトデーどうするんだ?」

 男二人での休日、隣を歩く中学以来の友人、香椎秋人(かしいあきひと)の問い掛けに、ふと足を止める。御月としては元々優希や家族以外からは貰っていないため、おおよそ例年通りの予定のつもりなのだが。
 わざわざ言わなくとも分かっているであろう相手からの不意打ちに、さすがに面食らった。

「いや、いつも通り適当に見繕って渡すつもりだけど。それがどうかしたか?」

「あー、なんつーかその、参考にさせてもらえねーかと思ってな。」

「? お前『今年もゼロとかマジあり得ねえ!』ってキレてただろ、返すも何も。」

「悪いかよ! ていうか人が非モテみたいに言うんじゃねえよ!」

 みたいもなにも事実だろう、と言いたいところを飲み込んで、悪かったと一言。いつも通りの冗談のようなものであるが、互いに程度は弁えている。

「あーあ。やっぱアレだ、ただしイケメンに限る、ってのもアテになんねーな。」

「自称はイケメンに含まれねえよ。」

 一応突っ込んではいるが、この男。少なくとも自称出来る程度には整った顔付きをしており、外見も気に掛けてはいるため、異性からの第一印象そのものは決して悪いものではない。
 とはいえ、先天的に色素が薄く赤に近い茶髪、さらに軽音楽部という所属も相まって軽薄に見られる事が多いため、せいぜい格好良い人止まりとなってしまう。

「なんつーか、軽い感じのコじゃなくておしとやかっていうか? あーゆーのが良いんだよ!」

「……そういうタイプには距離置かれやすいよな、お前。」

「はあ。地毛だしカッコよくて気にいってんだが、黒染めした方がいいのかねー。」

「どうしても避けられたくないなら考えてみても良いんじゃないか。」

 話題が脱線していたことに気付き、改めてホワイトデーの話について問い返す。そもそも、貰っていないならホワイトデーでの行動を参考にする必要などないのだから。
 少しの間を置いて秋人から返ってきたのは、予想外の返答であった。

「あー、いやその、15日に神鷺から、な。」

「アイツからか、良かったじゃないか。で、義理?」

 失礼な奴だ、などと憤りを見せつつも、少し悩む素振り。どうやら彼女からどちらなのかを聞きそびれた為、はっきりこうだとは言えないようだ。

「はぐらかされたかもしれないが、その時にちゃんと聞いておけば良かったな。」

「御名坂を通じて聞いてやるよとか、そういう心遣いはないのな。」

「……余計なお世話だろ?」

 御月にそう返され、迷うことなく首を縦に振る。とはいえ、もやもやとした感情を抱えているのはよろしくないのだろう。ああでもない、こうでもないと悩む秋人の姿があった。

「明日に備えて用意しておこうとは思ってたし、ちょっと予定変えるか。」

「……そうだな。選ぶの手伝ってもらって良いか?」

「的確なアドバイスとかは無理だぞ。」

 分かってると一言。元々私用での買い物の予定であったため、ショッピングモールに足を運んでいたのが功を奏した。そうして御月の先導でモール内を話しながら歩き始める。

「ん? 服屋通りすぎちまったぜ?」

「そこのブランドあんまり好きじゃないんだよ、アイツ。」

「んな事まで覚えてんのかよ……」

「一応な。それに、そこ値札が二桁違うから流石に無理。」

「はー……大変だな。」

 そうして御月らが到着したのはアクセサリーショップ。比較的手頃な物から、高級品まで幅広く取り揃えているため、様々な世代に人気がある。

「んー、12月の誕生石は、と……この辺りか。」

「誕生石?」

「ちょっとしたお守りみたいなもんだよ、自分の誕生月の石を身に付けると加護がある、とかそういう。」

「……毎年送ってんのか?」

「流石に誕生石ばっかじゃねえよ。ただ、優希の場合身に付けるものか食い物が特に喜ぶから、アクセは多くなりがちだな。」

 マメな奴だな、秋人が御月の話について感じたのは主にその一点。そして、不躾だとは思いながらも、一つだけ聞かざるを得なかった。それは、毎年そんなに金を掛けているのか、ということ。秋人としては若干腰が引ける話であるため「そんなことはない」と否定が欲しかった所であるが、返ってきたのはまるで正反対の答えだった。

「まあ、互いに相手の誕生日とかはちゃんと用意するようにしてるよ。このブレスだってバレンタインで貰ったし。」

「ノロケてんじゃねーよ!」

「ノロケじゃねーよ!」

「……やっぱ金掛けないと駄目か?」

「……相手次第じゃないか? どっちかが相手に強要するような事になるならやめた方がいいだろうしなあ。」

 神鷺はブランドじゃないと駄目とか言うタイプでもないだろうと笑う御月を見て安堵したのか、表情から硬さが消える。

「だよなー。まあとりあえず、アイツに似合いそうなアクセでも渡すか。お前はもう決まったのか?」

「ああ。先清算済ませてくる。」

 そう言ってレジへと御月が持っていったのは、カットされた宝石がしつらわれている、小さめのペンダントトップと、細いネックチェーン。他にもイヤーカフスやブレスレットといったアクセサリー類をまとめて購入したらしく、小さな紙袋を提げて秋人の所へ戻ってきた。

「おまっ……御名坂相手に幾ら貢ぐ気だよ……。」

「は? ……ああ、優希に渡すのはペンダントだけだぞ。他のは姉貴と日向に、母さんの分。」

「ああ、家族にも貰ってたのな。幾らしたんだ?」

「言っても一万ちょっとだよ。日向に高いモノ着けさせるのも早いしな。」

 勘違いを軽く詫びつつ、再びケースへと視線を戻す。ひとまず方向性はおおよそ決まったのだが、具体的にどんなアクセサリーを贈るかを決めあぐねていた。

「……なあ、ヘアピンかアンクルかどっちが良いと思う?」

「どっちだろう。確かにアイツ結構サンダル履いてること多いからなあ……ただ、季節関係無しに使えるヘアピンの方が無難だとは思うぞ?」

 一頻り悩んだ後、花柄の装飾が着いたものを手に秋人はレジへと姿を消した。何をするでもなくケースの中に並んだ、学生には些か値の張るアクセサリーを眺めていると、不意に肩を叩かれた。

「ん、早かったな……」

「やっぱり白銀じゃん。どしたのこんなトコで。」

「かっ、神鷺?!」

「なんか失礼なリアクションしてくれちゃってまあ……私だって女子なんだしアクセくらい見ますっての。」

 そういう意味じゃないと弁解しながらも、改めて目の前にいるクラスメイト、神鷺夏希(かさぎなつき)に視線を戻す。夏希はというと、手に持った小袋を見て得心がいったのか、いやらしい笑みを浮かべた。

「そっかー、優希にあげる分買いに来てたんだ。袋見た感じ幾つか入ってるっぽいけど、愛されてるじゃんあの子。」

「違えよ。優希のも当然あるけど他は家族のだって。」

「そういえば兄弟男一人なんだっけ。」

 眉間に皺を浮かべながらも頷く御月。少しの時間を置いて、夏希から再び質問が投げ掛けられる。

「そういえば買い物済んだっぽい感じだけど、誰か待ってる?」

「ああ、香椎の奴を……」

「アイツ喋ったの?!」

「へっ? あ、ああ、まあ……他は誰にも言ってないみたいだけど……もしかして口止めしてたのか?」

 そういう訳ではないと言いつつも歯切れが悪い。よくよく考えればバレンタインデー前後は平日だったにも関わらず、学校にいる間二人からその話題が一切出なかったあたり、初めから他者の目に留まることを避けていたように思える。

「なんていうかその、今さらって言うか、恥ずかしいじゃん?」

「まあ、確かに……ん、香椎の奴店員と話してるのか。やけに遅いと思ったら。」

「なんっかデレデレしちゃってまあ……」

「いや、単に「彼女にプレゼントですか?」とか聞かれてるだけじゃないのか? あの人結構そういう話すること多いぞ。優希とも顔見知りみたいだし。」

「結局ちょっと美人な女の人相手に鼻の下伸ばしちゃったりしてるだけじゃないの? 男なんだし白銀もそういうのあるでしょ?」

「……別に。」

 露骨に呆れたような視線を向けられる。

「バカップルにする質問じゃなかったか。ていうかさー、それで付き合い始めたのが中学出てからってどういう事よ。ちょうど優希と仲良くなりはじめた頃にアンタとの仲からかってみたら、あの面白おかしい子に半ギレで否定された私の気持ちにもなりなさいよ。なんであのイチャイチャ具合で付き合ってなかったの? 馬鹿なの?」

「悪かった。」

 凄まじい勢いで捲し立てる夏希に思わず平謝り。

「っつーか人の彼女捕まえて面白おかしいってお前な。」

 そうこうしている内に清算を終えたらしい香椎がこちらに視線を向け、そして視線を逸らす様が見えた。

「あ。」

「わ、私邪魔っぽい?」

「ヘタレてんなあ……」

「あんたが言うことじゃないわ。うーん、やっぱし私はおいとましますか、顔合わせづらいしね。」

「……明日の楽しみにでもしたらどうだ? ていうか一人で来てたのか、もしかして。」

 いや、いつもの三人。その言葉が聞こえるか聞こえないか、というタイミング。
 優希に背中を押されて連れてこられる秋人と、後ろから手を振りながら歩いてくる黒髪の少女、奈々月楓(ななつきかえで)の姿が見えた。

「やっほー、結局揃っちゃったねー。」

「いつもの事だろ。」

「それはそうだけど。二人は用事済んだの? こっちは今から帰るトコだったんだけどさ。」

「ああ、俺は後本屋見ていく位だな。」

「そっか、だったら私も付き合うよ。楓はどうする?」

「んー、今日はちょっと買い込みすぎちゃいましたし、私は遠慮しておきますね。」

 そう言う楓の両腕には大きな紙袋が二つずつ。優希から聞くところによると、どうやら使い潰した画材を新調したらしく、この日の為にアルバイトでの給料を貯めていたそうだ。

「それ、色鉛筆にライトボックスだったか? 確か何万かするんじゃ……。」

「そのために貯金してたんですよー。今まで使ってた頂き物は流石にこれ以上は使えなくなっちゃいましたし、これでまた数年は買い換えの必要はありません。」

 そう言って両腕の袋を小さく掲げる楓。幾ら余裕を見せているとはいえ大荷物を持つ人間を連れ回す訳にもいかないし、楓を引き留めることはしなかった。

「じゃあ、奈々月は此処でか。またな。」

「はい。春休みはまだありますからね。」

「じゃあねー。」

 楓に手を振りながら見送り、御月と優希の二人は顔を見合わせた。

「それじゃあ、俺達も本屋見て帰るから、また今度。」

「ちょ、ちょっと待て! せっかくだから付き合うぜ!」

「そうそう、まだ時間あるし別行動って言うのももったいないじゃん!」

「いやいやいや、だってもうホワイトデーなんだよ? せっかくタイミング良く会ったんだから二人で遊びたいじゃない?」

「そういう事。それに、香椎も丁度良いタイミングだろ?」

 バレンタインデー貰ったんだからちゃんと返しておけよ、と御月に言われ、慌てて夏希の方へ視線を向ける。その目に映った少女の姿は緊張しているのか、頬を僅かに紅潮させて顔を背けた。

「そういうわけだから、また今度。夏希、後で報告よろしくねっ!」

「うわっ!」

「ちょっと!」

 咄嗟の制止を聞くこともなく、優希は御月の手を引いて人混みの中へ紛れてしまう。すぐに御月らの姿は見えなくなり、後に残されたのは、気まずそうな表情の秋人と夏希の二人。

「えーと。その、映画とか、なんか見てかないか?」

「あ、うん。……何買ったの?」

「……ヘアピン。似合うかと思ったんだけどさ、ああイヤ別にずっと着けてて欲しいとかそーゆーんじゃなくて、何と言うかその……!」

「……くくっ、カワイイの期待してるよ。」

「お、おう、任せとけ。」



「そういえばさ、御月は何買ったの?」

「ん? ペンダントと替えのチェーン。細めのが欲しいって話最近してたろ。」

「ああ、覚えててくれたんだ。そうなんだよね、最近買ったトップが可愛いんだけど手持ちのチェーンじゃ合わなくてさー。ところで夏希何か言ってた?」

 優希の質問に視線を逸らす。不審に思って問いつめてみたところ、付き合い始める前のことで小言を言われた程度だったので聞き流すつもりであったが、御月の言葉に改めて聞き返すしかなかった。

「面白おかしい子ってどういう事なの。」

「どうせ変な写メ送ったんじゃないのか。俺が分かる訳ないだろ。」
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