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第九章。

数ヶ月振りの本編進行?
うどんげとか射命丸とかアレとか、そんな感じです。




「高いですよ?」そう言って勝ち気な笑みを浮かべる天狗の少女。その表情に、どこか不穏なものを感じる三人であった。

「高い、と言われても、金目の物は持っていないが。」

「いやいや、別に金銭を目的としているわけではありませんし、そもそも外来人がここで使える金目の物を持ってるとは思っていません。」

「でしたら……」

 言い掛けて、はっと口をつぐむ。不安そうにエヴァンジェを見る妖精の仕草で感付いたのか、くっくっ、と含み笑いを溢した。

「まあ、私は新聞屋ですからね。ご想像通りですよ。」

「……情報、か。どういったシナリオが望みだ?」

 え、と小さな声を上げる射命丸。少々なりとも手こずる前提で顔を出したのだろう、エヴァンジェの態度に意外そうな反応を示す。

「あやややや、別に脚色された『劇的なシナリオ』が欲しいわけではありません。清く正しい幻想ブン屋としては、今の状況をハッキリと把握するための情報がやはり必要なのですよ。」

 清く正しい、ね、と呟く美鈴を余所に、メモ帳を片手に捲し立てる少女に気圧されていたエヴァンジェだったが、ふと視線を外すと。荒れた森の姿と、見覚えのある金属の塊が視界に入った。

「もう館の近くまで来ていたのか。」

「ふむ、その様ですね。皆さんはあれを調べる予定ですか?」

「ええ、まあ、その様なところです。」

 不思議そうな表情を浮かべ、妖精メイドの方をじっと眺めていたが、小さく首を捻り、そのまま荒れた景色の方へ踵を返す。気になった点がないとは言わないが、所謂個体差のようなものだろうと結論付ける。別に妖精が全て同じ様な個体ばかりというわけではないのだ、「変わり者」だって当然ながらいるだろう。

「ふむ。それでは、時間の余裕も多くはありませんし、行きましょうか。」

「お前も着いてくるのか?」

「嫌だなあ、情報を買うと言ったのは貴方ではないですか。こちらもまだ何もお伝えしていませんし、貴方からも何も聞いていない。新聞屋がこのまま手ぶらで帰るわけにはいきませんよ。」

 誇らしげに胸を張る天狗の少女。微妙な表情のエヴァンジェらを余所に、高下駄をかつ、と鳴らし歩き始める。それに数歩遅れて動き出したその時、不意に少女が振り向いた。

「悠久の幻想ブン屋、清く正しい射命丸文です。……改めまして、よろしくお願いしますね。」

「そういえば、しっかりとは挨拶も済んでいなかったな。エヴァンジェ、“ワタリガラス”だ。……よろしく頼む。」

「ひどくやらしい?」

「せっかく綺麗に纏まったのに、水を差すようなことしないでくださいよ。」



「また、出たらしいな。」

「ああ。」

 竹林を臨む縁側に腰掛け、神妙な面持ちで、一人は表情を知れない仮面のまま、淡々と言葉を交わす二人の男。その傍らには、また複雑な表情で湯呑みを持つ椛と、茶菓子を摘みながら二人の話を聞く兎に似た耳の少女がいた。
 背丈はおおよそ同世代である、十代後半の少女の中では高いだろうと言ったところ、紅魔館の門番より頭一つほど小さいくらいか。そして、兎を思わせる耳や尻尾を除けば、ブレザーに赤のタイ、スカートにローファーと、女子高生、と言われるとしっくりきそうな。そういった外見をしていた。

「誰が落としたんだ? その時点で、我々の機体以外に二機ほど、ACがこの地にあったと聞いているが。」

「詳しい話は私も知らないな。ひとまず情報を纏めた限りでは、恐らくはファシネイターだと考えるのが妥当だろう。」

「……レイセン、お前は何か知らないのか?」

「師匠の使いで何ヵ所か回っては見ましたけど、博霊神社にお二人の同業者らしい人物が居る、というのと。」

 一拍おいて、湯呑みを空にした後一息。

「妖精のいる湖にアレと同様の兵器があるらしい、という話を聞きました。」

 アレ、というのが何を指すのかは、改めて問うまでもなかった。レイセンと呼ばれた少女の言葉を継ぐように、隣に腰掛けていた白狼天狗が口を開く。

「イナバさんの言う兵器なら私も見たんですが、あの場に搭乗者らしき姿は見当たりませんでしたね。」

 パルヴァライザーと呼ばれていた物よりはむしろ、二人の兵器に似ていたところから、有人の兵器じゃないかと思うと、少女は続ける。しかし、千里眼が見たものの輪郭が朧気に見えてくるにつれ、二人の男の表情が険しくなる。No.9。かつて最強の傭兵として活躍し、アリーナの場でそれを倒しえた者は『ナインブレイカー』と称賛されたとまで言われた、鬼神のごとき力を持ったレイヴン。今に至るまで『最強』の称号として語り継がれるその機体の名は、『ナインボール』。

「……関わらない方が賢明だな、戦力として引き込めるかも怪しい上、非公式記録が正しければ、アレは無人兵器の可能性すらある。」

「まさか……インターネサインとやらと繋がっているかもしれない、と?」

「懸念材料のひとつといったところだ。」

「敵対しないに越したことはない、でしょうね。」

 頭痛の種が増えた、と言わんばかりな四人の胸中も虚しく、状況は動き続ける。



「あややや、これはまた派手にやりましたねぇ……」

 完全に機能を失った鉄の塊を見、感嘆の声を上げる射命丸。頭部左から右脇腹までを大きく穿った風穴が、レミリアが殺気をもって放ったグングニルの威力を示している。自らが止めを刺したとはいえ、一度恐怖心を植え付けられた相手に、見上げる美鈴の表情はひどく固かった。

「頭部らしき部位は完全に沈黙していますね。見てみます?」

 答えるより早いか、器用にひん曲がった装甲や部位間の隙間に手足を掛け、数十秒としないうちに胴体上部へ辿り着く。

「……これは。」

「エヴァンジェさーん、何か分かりそうですか?」

 美鈴の問い掛けに曖昧な返事をし、頭部パーツを覆っていた煤を払う。わざとらしい咳払いをしながら、舞い上がった煤を風で吹き飛ばす様を見て、彼女もまた、人ならざる者だと実感を得る。
 機体は大破しており、頭部も例に漏れず、一部分を欠損させた状態で鎮座していた。興味深そうに各所を眺める射命丸を余所に、割れた装甲の隙間に手を掛ける。

「開けられます?」

「ああ。」

 おお、という声を聞き流し、剥がした装甲と内部に取り付けられていた電子部品などを背負ったザックに仕舞ってゆく。大きすぎて持ち運べそうにないもの、記録装置のみを取り外すことができない物などは端末を使い、辺りの警戒もそこそこに、抽出していたデータを眺めていると、幾つかの単語がふと引っ掛かる。

「……インターネサイン、やはりか」

「コレの製造施設、でしたか」

 そこまで知っているのか、と小さな驚きを見せたエヴァンジェに対して「ブン屋であれば当然です」と気取った素振りもなく言い切る。パパラッチとなどと呼ばれているが、彼女は彼女なりにプライドをもって臨んでいるらしい。

「ああ。破損しているデータもあって完全には引き出せないが、座標データなり内部構造なりが分かれば上等だな。今解析出来た部分を見る限り、インターネサインがこの地にあるのは間違い無さそうだ。」

「そうですか。」

「……ところで、射命丸といったな。」

 返事はしつつも、彼女の意識は目の前の機械人形の亡骸に向いている。エヴァンジェの続く言葉は粗方分かっていたし、少女は既にその問いに対する答えを持っているのだから。

「……貴方以外の三名、いや、ジャック・Oを除けば二名か。そちらの素性、ですね?」

「……」

 答えはない。その沈黙を肯定と見たのか、ひとつ咳払いし、視線はそのまま語り始める。

「今私が把握しているワタリガラスはお二人を含めて四人。」

「残りの二人は?」

「ジノーヴィーという男性と、ジナイーダという女性です。男性の方は永遠亭に、女性は博霊神社にそれぞれ身を置いていますね。」

「チッ……既に一度ジノーヴィーとは会っていたという事か。」

 射命丸に聞き返され、何でもないと口をついた言葉を打ち消す。永遠亭へジャックが向かったのは間違いなくジノーヴィーとの接触のためだろう。

「それから、ACと呼ばれる機動兵器、およびそれに準ずるものは現在五機ですね。」

「五機?」

 嫌な予感がした。パルヴァライザーやガーディアンを数に含めるのであれば五機ではすまないのもそうだが、「ACに準ずるもの」という言葉。搭乗者であるレイヴンと数が合わないところをみると、単純に機体のみが流れ着いたか、搭乗者が乗機を残して居なくなってしまったということも考えられる。
 しかし、彼の本能、戦場に居た者の勘は最悪を想定していた。

「ええ。それで余剰の一機ですが、赤と黒の二足歩行型、他の四機と違い左腕は素手になっていて……肩には9という数字のエンブレム。」

 心当たりはありませんか、との言葉も遠く聞こえる。心当たりはあって当然、レイヴンであれば知らぬ者など居ない、そういう存在なのだから。

「ナインボール……。」
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