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第五章。

続きを更新、そろそろエヴァンジェの行動開始です。



 突然張り上げられた大声に慌てて耳を塞ぐ。庭の一角、鎮座する巨大兵器の足元に腰掛け、数刻ほど前から話をしていた美鈴とエヴァンジェ。
それまで聞き流していた『お嬢様』の武勇伝だが、彼女の『あの化け物を倒した』という言葉には流石に声を上げざるをえなかった。

「ええ。辛うじて、といったところでしたが……。」

 美鈴のその言葉を聞いて、ふと思い出した。彼女が戦闘したという個体と、別の場所で出現したという個体の姿が違っていたという事を。

「そうか、一度破壊されたと考えれば繋がる…。」

「どういう事ですか?」

「アレは…パルヴァライザーは。戦闘を繰り返す事で成長する兵器なのだ。」

 エヴァンジェの言葉に、ざあっと血の気の引く音が聞こえた気がした。



「…ほう。成長する兵器、ね。」

「ああ。インターネサインと呼ばれる製造施設に自身の戦闘データを送信し、それに対応して機体の性能を上げて行く。戦闘データを送った機体が破壊されれば、その時の敗因に応じて性能が底上げされるんだ。」

 巫山戯た玩具だな。そう毒づいたレミリアを見、同感だと首を振る。隣には同様に疲れたような溜息を吐く咲夜の姿もあった。

「……ん? そういえば、パチュリーとやらは此処には来ていないのか?」

「パチェなら図書館。あの喘息じゃ前には出られないし、今すぐ彼女に教えても仕方ないでしょう?」

「知識があるようなら、何か対策を立てられると思うのだが…。」

 我々とは技術の程度が違うようですから、と苦笑いを浮かべる咲夜。どうやら彼女の方でも既に動いてはいたらしいが、どうにも情報が不足しすぎているとの事。かといって、エヴァンジェの方でもそう多くの情報は握ってはいない。現状では手詰まりといって良かった。

「…ただまあ、逃げる事も叶わない以上、斃すしかないわね。一所に留まっている者達ほど。」

「それもそうだが…幸いなのは、我々が居た世界ほどすぐに使える資源がないところか。機械文明が全体的に発展しているわけでないのなら、鋼鉄などもさほど多くはないはずだ。」

「そう言った兵器が無尽蔵には出て来ない、という事ですか。」

「ああ。…所でさっきから気になっていたのだが。」そう一言置き、レミリアの方へと視線を移す。初対面の時と話し方が幾分か違うため、先程から少々戸惑っていたのだ。

「? ああ、話し方。こっちの方が地なのかしらね。」

「…話す本人が曖昧なのもどうかと思うがな。」

「……。」

 不機嫌そうに眉根を寄せるレミリアを気にした様子もなく、カップを置く。

「あら。」

「このまま話していても特に進展もなさそうだな。」

「その様ね。ただ一つ。幸いとは言ったけど…あの人形に使える資源も少ないと考えると、手放しで喜べないのではないかしら。」

 痛いところを突いてくれる、と溜息混じりに茶菓子として添えられたマドレーヌに手を付ける。事実、現時点では十全な整備は不可能だし、資源も限られているため稼動そのものを控えなければならないという、大変に辛い状況であった。

「燃料も気になるしな。…この辺り、いや。幻想郷にこういった知識に聡い者は居ないのか?」

「…居るには居るがな。」口調と共にレミリアの表情が険しくなる。

「ジャックという男の知り合い、なんですよね?」

「…ああ。」

「では話は早いのですが。」そう一つ咳払い。
 ジャック・Oとともにこの館に押し入った連中の中に一人、河童の技術者が居るらしい。他には永遠亭と呼ばれる場所に住まう月の民も、高い技術力を持っているとの事であるが、どちらとも隣の主は好いていないらしい。後者はともかく、前者はというと多大な迷惑を被らせてくれた張本人とも言えるのだから当然といえば当然であった。

「なるほど。…なら、門番を借りても構わないか?」

「何?」

「少しその河童の技術者とやらに話を聞いてこようかと思ってな。外には人外が出るのだろう?」

 生身の人間一人ではとてもとても、そういって肩を竦めた。実際の所強化人間と普通の人間とでは大きく違うのだが、かといって自分のみで人ならざるものが跋扈する所へ出て行くほどの蛮勇は、生憎ながら持ち合わせていなかった。

「まあ、妖精メイド一人ではな。…いいだろう。」

「お嬢様?」

「今の所事態は沈静化しているようだし、静かな内に情報収集でもしておくといい。」

「…私の仕事が増えますわね。」瀟洒なメイドの溜息が聞こえた。



「それで、天狗の山へ…ですか。」

 二人を先導し、中華服を翻し森を歩く美鈴。その後ろを付いてエヴァンジェと、妖精メイドが歩いていた。

「うむ。何か情報が得られればよいのだがな。」

「…しかし、出会えたとして簡単に情報を頂けるのでしょうか。」

 妖精メイドの問いかけにさあ、と首を振る二人。元々さして期待をしていたわけではないが、何か収穫があればいい、程度に考えていた。実際収穫無しであればどれほどの疲れが来るのかは想像したくもないところだが。

「……。」山の麓を越え、更にしばらく歩いたところか。不意に、エヴァンジェの足がぴたりと止まった。

「どうしました?」

「…いや、どうやらそっくりそのまま生前の姿、という訳ではなさそうだと思ってな。」

 そう言って視線を少し上に向ける。

「そろそろ出てきてはどうだ? 話があるなら聞かせて貰うが。」虚空に問う。妙なものを見るような目で二人が此方を見るが、その様な視線を向けられても居るのだから仕方がない。
 どうやら、幻想郷に紛れ込むにあたって、どういう訳か『グリッド方式のレーダー』を体内に搭載しているようだ。

「…やれやれ。貴方もあの人と同じ事が出来るんですか?」その様な小言と共に頭上の枝が揺れる。高下駄を甲高く慣らし地に降り立ったのは、美鈴よりも頭一つ背丈の低い、山伏衣装に身を包んだ白髪の少女。頭部には狼のような耳が見える。紅魔館では見かけない種類のものらしい。

「あの人というのは?」

「…質問は此方が先。天狗の山に何の用だ?」一瞬はっとしたような表情を浮かべた少女だったが、すぐに表情を引き締め、硬い口調で問いかけてくる。

「ちょっとした人捜しです。…別に私達が何かしら手を出そうと考えているわけではありませんよ。まあ、この人の護衛のようなものと考えて頂ければ。」美鈴が笑いかける。しかし依然として「本当に?」等と疑いの目を此方へ向けてくる少女を見ているといささか疲れも感じる。

「…本当だ。ジャック・Oという男を捜している。彼女等から話を聞いたところ、『天狗の山』という場所に居るらしいと聞いていてな。」

「…名前は。」

「エヴァンジェ。レイヴン…いや、便利屋のようなものだ。」

 のようなもの、か。と小さく呟く眼前の少女、その瞳には呆れの様な感情が見え隠れしていた。予想が正しければ、この少女が『幻想郷での』ジャックの知り合いなのだろう。

「それで、お前は?」

「…申し遅れました。私は犬走椛、以後お見知りおきを…いえ、やはり結構です。」

「やれやれ……初対面だというのに随分な嫌われようだな。」

「…あの人の同業者であれば当然かと。それと、残念ながら今は山に居ませんよ。少し外しています。」

 そして、椛と名乗った天狗の少女は踵を返した。
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