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Delusion Blother

久し振りの掌編更新。今回はユーリに焦点を当ててみました。

ユーリって誰?って方はこちらを参照下さい。
細かい変更点はありますが基本的な設定は同じなのでw





―初恋は叶わない。よくあるジンクス。それは私にとっても例外じゃなかった。



―その傷も癒えた後だと言うのに、同じように恋をして、同じように傷付く。



―あの時、私は。



―どこかで、自分が持たない『兄』を見ていた。



「ユーリ、何してるんだ?」

「や、何でもないわよ。なんとなく外見てただけだし。」そう言ってユーリは視線を外す。

 窓の外に何が見えるというわけもないが、こうして何気なく街並みを眺めるのは好きだ。

「ふーん。」

 いつも通り。
彼女は御月の家にふらりと現れては、彼の姉妹と話したり、御月の部屋で何をするでもなく時間を過ごす。

「…最近よく来るよな、お前。」

「そ、そう…かな? まあ、休日向こうにずっと居るのもつまらないしね。」

「優希とは?」

「時々会って話すよ。…向こうに友達が居ないとかじゃないけど、やっぱり二人と話してる方が好きだから。」視線を御月の方に戻す。逆光で表情までは窺えない。

「別にそこは疑ってないぞ。」

「あはは、そうだっけ?」

 カラカラと笑い、また窓の外へと視線を戻す。そっか、と小さく呟くが、その言葉は御月の耳には入らない。



―何をしているんだろう、私。叶わないことだってわかってるのに、何度も、何度も。



―貴方に逢うために世界を越える。



「そういえば、この頃優希さんとはどうなの?」

「どうって、別にこれまで通りだよ。特にやましいことは…」

「嘘だぁ、優希さんすっごい機嫌よかったし、何かあったんでしょ? プレゼントとか?」

 そういうわけじゃない、と気恥ずかしそうに言葉を濁す。自分には解らないが、二人だけの特別なことがあったことは確かなようだし、それ故か、心の何処かで疎外感があったのは、紛れもない事実だった。

「そう?…羨ましいね、仲良くてさ。」

「そうか?」

「…うん。私もボーイフレンド欲しいなー。」

「ユーリならすぐ見つかるだろ。…まあ、お転婆だし相手が振り回されるかもな。」

「バーカ。」ユーリは笑みを浮かべる。少しの沈黙を経て。

「…ホント、馬鹿なんだから。」
 誰に向けたか分からない言葉が宙に消えた。

「…なにか言ったか?」

「何も。…ねえ、御月…さん。」

「ど、どうしたんだよ、改まって。」

 小さく深呼吸。

「もし、さ。優希さんより先に、私と逢ってたら…どうだったのかな。」

 答えはない。視線を移すと、驚いた表情の御月がこちらを見ていた。

「どうって…」

「ああその、仮に、の話だからね? その、なんとなく気になったの。ひょっとしたら付き合ってたりとかー、って。深い意味はないんだけどね。」

「ん…どう、だろう。恋愛感情を持つかはわからないな。…もしかしたら、今とは違う好意を持ってたかも知れないとは思う。」

 好意と一口に言っても、それが誰に向けられるかで、その意味は大きく変わる。そして、御月の言葉で、気づいてしまった。
自分は恋人たり得ないのだと、恋愛感情を持たれることはないと。

「…まあ、そうなってみないと判らないし、もしもの話なんてしても仕方ないわよね。」

「そりゃあ…な。」

「ゴメン、馬鹿なこと聞いて。」

歪んだ笑みを浮かべるユーリ。その声のトーンが一つ下がった。

「…こっちこそ、こんな答えしか返せなくて悪いな。苦手なんだ、こういう話。」

「…知ってて聞いたの。…ちょっと長居しすぎちゃったかしら。そろそろ帰るわね。」

 そう言って逃げるように部屋を出ようとするユーリ。

「…またな。」

 引き止めるでもなく、言葉を発する。今引き止めたところで彼女に掛けられる言葉などないし、何を言っても余計に傷つける結果しか見えなかった。

「うん、…また今度。」



―はは、フラれちゃった。わかってはいたけど、こうやって突きつけられるのは。



―やっぱり、キツいよ。



「…優希さん。」

「あ、ユーリ。今帰り?」

 玄関を出てすぐ、遊びに来たらしい優希と鉢合わせる。
今現在、叶うならば最も出会いたくない相手であった。

「うん、そう。」

 軽く言葉を交わし優希の側を通り抜けようとした刹那、口をついて言葉が零れた。悪意を湛えた言の葉が。

「…良いよね、傍に居てくれる人がいるってさ。」

 一瞬、優希の表情が強張るのが見える。そして、何故そんな表情をするのか、と少し考え気付く。自分が発した言葉にさえ気付いていなかった。

「…そうだね。でもさ、私を妬んでも何も変わらないよ。」

「?! そ、そんなつもりじゃ…」

「判ってるよ。でもね。こっちがどんなに好きだって思っても、どんなに傍に居たいと思っても。…選ぶのは御月。」

「それはっ」おかしい? 逆に問い掛けられ、言葉に詰まる。

「私は自分の意思で御月を選んだし、ユーリもそうだよね? だったら、誰を好きになるかは、同じ様に御月が決めることだよ。」互いを互いが選んだから、傍に居られると、彼女は言い切った。

「優希さんは、選ばれたからそう言えるんでしょ?!」

 自分でも滅茶苦茶だと思う。先に好きになったのはどちらかの違いだけで、互いが自由意思で相手を選ぶ事には変わりないのに。
 しかし、だからといって感情がそれを許すことはないし、こう言った以上、引き下がることもできなかった。

「選ばれなかったらそれでおしまいなの? 絶対に諦めなきゃいけないの? ズルいよそんなの!」

「それで私にどうして欲しいの。同情して身を引けばユーリは満足なの? …違うよね。私が御月から離れようがユーリを選ぶ保証はないし、そんなの私がどうこうできる問題じゃないよ。」

 それだけ言って、優希は目を伏せる。
視界が揺らぎ、考えが纏まらない。何を言おうとしてもそれが言葉になる事はなく、ただただ嗚咽を漏らすしかなかった。



 優希は何も言わず。また、ユーリも口を開く事もなく。
その後長い時間をおいて、優希の言葉が聞こえる。

「…落ち着いた?…言い方キツくなっちゃったね…ごめん。」

「大丈夫。気にしてないから。」

「……。」

 少しの沈黙。答えを待つように、優希はその紅い瞳を見つめる。

「…自分勝手かもしれない。…でも、私はあの人が好きだし、優希さんが羨ましい。妬ましいくらい。」

「…そっか。」

「怒った?」

 少し悩む素振りを見せ、小さく首を振った。

「怒らないよ。…さっきはちょっとムキになっちゃったけどね。」

「もう少し、大人の余裕って言うのは無いのかしら。」

「大人じゃないからね。…まあ、こんな所で燻ってるより何か行動した方が良いと思うよ?何もしなくて後悔する方が、多分…ツライから。」

「なっ…」

 図星。言葉を失い目を見開くユーリを見、小さく笑う。まるで自分の事を話すかのように。

「やっぱり。別に告白したくらいで私はどうこう言わないから、気にしなくてもいいんだよ。振られるならはっきり振られた方が気持ちも楽だからね。」

「…振られる前提ってどうなの? ていうかさっきかなり刺々しかったわよね。」

 ユーリの言葉に意表を突かれたか、苦笑いを浮かべる。

「あっはは、そりゃあ彼女として信用してるからね。…それに、刺々しかったのはユーリがあんな言い方するからでしょ? …無意識だったとしても、あんな風に言われちゃ流石に頭にもくるよ。」

「…ごめん。」

「ああいや、そう言うつもりで言ったんじゃないんだ。」慌てて手を振る。ますます小さくなるユーリの手を引き、優しく髪を撫でる。

「誰かを羨ましく思うのも、誰かに嫉妬するのも、普通のことだと思うけど…でもさ。そればっかりになって他の人を恨んだりしてたら、余計に振り向いてもらえなくなっちゃうじゃん。」

「…。」

「好きな人が居るなら、尚更振り向いてもらえるようにしなきゃ。…御月はあげないけどね。」

「はははっ……でも、いいや。…お似合いだよ、二人とも。」

「…いいの?」

 くどい、そう言って少女は笑みを浮かべた。吹っ切れたとは見えないが、それ故に、深く踏み込む事も躊躇われた。

「そっか。」ユーリの頭をぽんと軽く叩く。

「…二人に負けないくらい、素敵な人見つけるから。」

「楽しみにしてるよ。」優希の言葉に苦笑いを浮かべ、踵を返す。ちらと此方に視線を移した後、少女の姿は消えた。

「…ままならないなぁ。」少し沈んだ声が、朱に焼けた空に消えた。



「…はぁ」溜息。何かいやな事があると毎度の如く、こうやって街並みを望める場所へと上がってくる。秋口の肌寒い風が頬を叩き、髪を揺らす。

「馬鹿だ、私。」

 彼には既に想い人がいるし、その隙間に入り込む余地など存在しない。それを判っていながら。いや、判っていたからこそ余計に惹かれたのかもしれない。

「…だって、居心地いいんだよ。あの場所。」誰に言うでもなく、ぽつりと呟く。
 彼にとっては友人ないし、彼の姉妹と接するそれなのかもしれないが、故に。
暖かかったし、心地よかった。『きょうだい』も無く、幼い頃からその才覚、家柄故に友人と呼べる人間も少なかったからか。尚更に、『あの場所』に少しでも長くいられる事を望んだ。

「…そうか。」

 『好き』以外の執着の理由が、少しだけ見えた気がした。

「…こんな所に居たのか。」背後から聞こえる声。まさか、と思い振り向いた先にいたのは。

「あ…」恋心だけでなく、『きょうだい』として執着していた相手。

 姿勢を崩して落ちないよう、恐る恐るといった様子で腰を下ろす黒髪の青年。

「御月…さん?」

「お前ほど身軽じゃないんだから。…もうちょっと探しやすい場所に居てくれるか?」

「っ」抑えきれなかった。
 屋根板を蹴り、気持ちのまま、感情のままに飛びつく。御月の表情は見えなかったし、見たくなかった。気恥ずかしさよりも恐怖心が勝つ。嫌われやしないか、拒絶されてしまうのではないかと。

「っと…?!」

「…ごめんなさい。でも、少しだけ。もうちょっとだけ、こうさせて。」

「…いいけど。」胸に顔を埋めるユーリを見、瞳を細めて髪を撫でる。
 日は既に沈みつつあった。

「…大丈夫か?」

「うん。あのさ、さっき言いそびれてたんだけど、一つだけ。いいかしら?」

「ああ。」

 深く息を吸う。そして、意を決して声を張る。

「貴方の事が、ずっと好きでした。…多分、今でもそうだと思う。」頬が紅潮し、薄らと涙を浮かべて、それでも視線は逸らさない。向き合うと、決めたから。

「…。」

 御月の答えは無い。

「答えは聞かなくても判ってるけど。それでも、伝えないまま終わりにはしたくなかったから。」

泣き笑いの様な表情のまま、震える声を絞り出す。此処で止めてはいけないと。

「そう、か。…予想通りの答えだとは思うけど、ごめん。好きな人が居るし、ユーリの気持ちには答えられそうもない。」

 予想通り。当たり前の結末だ。
それに、始めからこうなる事が判っていて告白したというのに。

「うん…うん。ありがと…ゴメンね、いきなりこんな事言って。優希さんが居るの判ってるのにさ、狡いよね? でも…迷惑じゃなかったら、せめてずっと、今のままで…いたいの…」

 涙が止まらなくなって。口を開けば嗚咽が漏れ、言葉にならない。
だけど、話す事は止めない。たとえそれがただの意地だとしても、伝える事を止めるわけにはいかなかった。

「…今のまま、か。難しいな。」黙っていたままの御月が、小さく呟いた。

「…そう、よね」

「努力はするよ。…コレでお別れ、っていうのも寂しいだろ?」その言葉と同時に、頭に暖かい手が触れる。

 たとえそれが、儚い望みでも構わない。『恋人』や『きょうだい』になんてなれないのは判っているし、それを相手に強要したところで、満たされる事はあり得ない。

 だったら、せめて。
『この場所』に留まるくらいは許されてもいいじゃないか。夢見る少女の小さな願いだ、それを無碍にするほど、神様は冷酷じゃないだろう。いつの間にか、微かに笑みを浮かべている自分に気付いた。本心は、まだずっと泣いていたい位だけれど、今笑えるのなら、それでもいい。
 嘘で満ちた『きょうだい』への執着なんて捨てて。



―私は不敵に笑えばいい。
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