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完全な従者と不完全な鴉、第四章。

しかし思った以上に筆が早く進みます。東方関係は実質コレが初めてなのもあるのでしょうか。

とりま、第四章ということで、話ももう少し進みます。



 廊下を歩くエヴァンジェを先導するように『浮遊している』人影。

「…結構居るんだな。」そう呟き、辺りを見回す。自分を案内する者と同様の格好をした妖精メイドらが、忙しそうに飛び回っている。

「まあ、大きなお屋敷ではありますから。」

「だが…忙しなくはあるが、働いているようには見えんな。」

 エヴァンジェの言葉に苦笑いを浮かべる。実際の所、館の管理は咲夜が一手に引き受けている為、妖精メイドの行う仕事は必然的に少なくなる。それに、身体が小さい事もあり、さほど効率もよろしくないため、事実『働く』というほどは働いてはいない。全体的に有能とは言い難い家事能力であった。

「さて、そろそろ大図書館ですね。恐らくパチュリー様が居られます。」

「パチュリー?」

 パチュリー・ノーレッジ。『魔法使い』という存在らしいが、主に図書館に引きこもっている事が多く、中々外出する事もないので会うのは容易だとか。
話を聞いた限りでは、少々気難しい人物なのだろうという予測は出来たが。

「また人外か…。」

「と言われましても、此処はそう言う場所ですので…。」

「判っている。」判っていようとも、簡単に認めがたい事は少なからず存在するのだ。よもやファンタジー紛いの魔法使いや吸血鬼、妖精などと立て続けに聞かされれば、溜息も吐きたくなろうというものである。

「…それで、そのパチュリーというのの他には、何が居るんだ此処は?」

「レミリアお嬢様の妹であるフランドール様、後は小悪魔が数名住み着いておりますが…。」

「また吸血鬼か。」

「妹様とは滅多に会う事もないでしょうし、余り意識する必要もないかと…。」

 言いづらそうに言葉を濁す。どうやらその『妹様』というのはなるべく触れたくはない存在のようだ。翳る表情には、薄らと恐怖の色が滲んでいた。ひとまず話題を魔法使いへと戻すが、その魔法使いにしても、どうにもやり辛そうな印象は拭えずにいた。





「…それで、貴方がレミィの言っていた客人?」眼鏡を直し、此方をちらと伺った後、手に持った本へ視線を戻す、薄紫髪の少女。『コレ』も、外見で判断してはならんなのだろうな、と漠然と考える。

「随分と胡散臭いのね。」

「自覚はある。だが、面と向かってそれを言われるとは思わなかったな。」

「あら、それは悪い事をしたわ。つい本音が出てしまって。」

「…。」顔を見合わせるエヴァンジェと妖精メイド。既にエヴァンジェの表情には呆れが色濃く見え始めていた。そして、それは相手方も同様であったらしい。

「それで、用はそれだけかしら? …読書の邪魔なのだけれど。」

「…それは悪い事をしたな。」はあと溜息を吐き、踵を返す。それに遅れ、慌てて辞儀をして図書館を後にする妖精メイド。少しの沈黙、頁を捲る音が数度響いた後「…何にでも例外はいるものね。」と抑揚のない声がから聞こえた。

「もう、待って下さいよ。まだ案内していない場所もあるんですから、あまり勝手な行動を取られては困ります。」

「とはいえ、これ以上案内されるところがあるとは思えないが…。」

 エヴァンジェの言葉に口ごもるが、慌てて居間や食卓などの生活施設の案内をと申し出る。実際のところ、最初咲夜に部屋へ案内された際に、客室内であらかたの生活が事足りる点を聞いていた為、共用や館の住人用となる施設をわざわざ利用する意義を見いだせずにいた。

「…まあ、そこまで言うのであれば。」

「はいっ!」

 だが、弾んだ返事とは裏腹に、案内自体は些か覚束無いものであった。時々言葉を選ぶ為に沈黙したり唸り声を上げる程度ならば良かったのだが、それ以前に、案内役が道に迷うと言う事態に陥ったため、笑うに笑えなかった。

「…道に迷うならなぜ案内した…。」

「も、申し訳ありません…。」ただでさえ小さい姿が更に縮こまる。状況が状況なだけに強く当たるつもりもなかったが、何故か言いようのない罪悪感が頭を擡げた。

「…まったく、何をしているのですかこんな所で。」

「…十六夜、だったな。」

「咲夜で構いませんわ。」そう言って二人の表情を見遣り、なるほどと小さく頷く。どうやら『迷っている』事にはとっくに気付かれているようだ。エプロンドレスを翻し、早々に歩き出す。

「客室まで送らせて頂きますが、それでも宜しいですか?」

「ああ、助かる。」

「…ありがとうございます」

 廊下を歩き始める咲夜を追って移動するエヴァンジェと妖精メイド。何も言わずに察した辺り、迷うなりなんなりの不手際は想定済み、と言う事のようだ。複雑そうな表情の妖精メイドを見るが、今になってふと気付く。
 彼女は、先程まで屋敷内で見かけた他の妖精メイドとはどうも性質が違うらしい。掃除などを行っていた他のメイド等はミスやトラブルに対してさほどのショックを見せない、楽観的な性質の者が殆どであったが、目の前の彼女は明らかに『単純な失敗にショックを受けている』。
 それが何を意味するかは、すぐにはわかりはしないのだが。
時間をおけば、わかるのかも知れない。ただ単に彼女の性格によるものなのか、彼女が何か特別なのか、それを判断するには『わかっていること』が今は少なすぎた。





「…はあ。」溜息。自室に帰るや否や、疲れたような表情を浮かべ背をベッドに預ける。ともかく、この奇妙な館の奇妙な主達には早めに慣れておいた方が良さそうだ。咲夜や妖精メイド等の話を聞いている限りでは、どうにも『普通の人間』と出会う事には期待できそうにないのだから。

「…あの、」

「なんだ?」

「いえ、その、エヴァンジェさんはどうして…幻想郷に?」

「…私にもわからん。元々いた世界で死んだと思っていたら此処にいた。」

「そうですか…。」ただ何をするでもなく天井を眺めている。しばしの沈黙の後も、横にいる気配は動く様子を見せない。

「これから、どうすれば良いのだろうな。」

「…。」答えはない。問うだけ無駄だったかと、寝返りを打つ。それから数秒、数十秒の後か。

「今は…少しずつでも幻想郷を知っていけばいいと、私は思いますよ。」

 小さく、だがはっきりとした言葉が、背に当てられた。

「…そうか。そうだな。」そうとなれば、先ずはやる事がある。

「あの、何処へ?」

「美鈴と言ったな、あの門番と話がしたい。」

「美鈴様なら正門の方に居られるかと…」

 何を置いても情報収集。あの厄介な主人やメイドはともかくとしても、少なくとも一人、こういった話を出来そうな人物が居る。最低限の警戒は怠らず、屋敷の外へ向けて二人は向かった。





「…私達のこと、ですか?」門柱に寄りかかり寝息を立てていた門番を起こし、庭先に鎮座しているオラクルの側に腰掛ける。普通でない事はとりあえず判ったが、『どう普通でないのか』を知りたかった。

「うーむ、突然そう言われると困ってしまいますね。…それでは、とりあえず能力の説明あたりからしていきましょうか。」

「能力?」

「ハイ。えー、私達…幻想郷の住人は大まかに『妖怪』と『人間』、『それ以外』と別れています。それ以外、というのは此処では説明を省きますけど…まあ、どちらにも属さない人もいる、と思って頂いて大丈夫です。」そう言って親指をグッと突き出す。今それを事細かに聞いたところで仕方ないと考えたか、特にエヴァンジェも突っ込む事はしなかった。

「それで、能力なんですが。…まあ使える人もいれば使えない人も居ます。私達の場合は『弾幕ごっこ』という使い道が主ですが、特定条件であれば当然『殺し合い』に発展する事もありますね。」

「弾幕ごっこ?」

「んー、主張のぶつかり合いとか、そう言った場で自分の言い分を通す為のルール、でしょうか。」

 美鈴曰く、殺し合いとは別にルールを設けて『倒し合い』に興じる事が間々あり、死まで追い込まない、ごっこ遊び程度、という特定制限での戦いを弾幕ごっこと称しているらしい。あくまで『ごっこ』であり、殺す事を目的としないという点で、自身が経験してきた『戦い』とは全く違っていた。

「それでですね、そういった戦闘なんかで発揮される特殊な力を能力と言いまして、これには個人差があります。」

 あくまで全力は隠している、弾幕ごっこ用に制限を加えている者も多いということだが、それを抜きにしても『時を操る』だの『ありとあらゆるものを破壊する』だの物騒な能力を持っている者がそこそこ多いらしい。
 最初に見つけたのが私でよかったかも知れませんね、と美鈴は笑いながら話していたが、話を聞いていく限り、他にもっとまともな選択肢もあっただろうと悪態を吐かざるを得なかった。

「…それで、お前は気を使う程度の能力、という訳か。」

「まあ、あくまで大雑把に言ってしまえば、の話ですが。」

 それで、強さとしてはどんな程度なのか。迂闊に聞いてしまったのがまずかった。
その後一時間ほど、『お嬢様』の武勇伝やら何やらを延々と聞かされるハメになり、その間に何やら物盗りにあったと思しき魔法使いの声と咳が聞こえていた。

 だが、その武勇伝も終盤に差し掛かり、いよいよ話も終わろうかという時。

「ちょっと待て、アレを倒したというのか?!」エヴァンジェの怒号が静かな庭園に響き渡った。





―続く―
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