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完全な従者と不完全な鴉、第二章。

というわけで、前回の続きです。

そこそこ長くなりそうな気がしてきた。



「…それで、エヴァンジェさん、と言いましたね。こんな所で何を?」

 コックピットから這い出したエヴァンジェを、偶然にも出迎える形で立っていた赤毛の少女。
ひとまず、現状の確認を最優先として、「紅美鈴」と名乗った少女と顔を突き合わせる事にしたのだ。

「それが判れば苦労はしない。そもそも、此処は何処なんだ? ファザードでは無いようだが…」

「ファザード? 此処は紅魔館ですけど。」

「コウマカン?」全く聞き覚えのない地名である。
 少なくともレイヤードには存在していないだろうし、地上でも足を踏み入れたことのない場所だろう。
しかし、あの「特攻兵器」による悪夢から、それほど日が経っていないにも関わらず、これ程まで見事にに建物が現存していると言うのも考えがたかった。

「…もう少し広い範囲で教えて貰えるだろうか。」

「広い範囲…でしたら、幻想郷。此処はそう呼ばれています。」

「…聞いた事もないな。」

 エヴァンジェの返事に、困ったような笑顔を浮かべる美鈴。
彼女の能天気にも見える姿を眺めていると、自らが傭兵であり、意識を失う寸前までは命のやり取りをしていた事など、忘れてしまいそうになる。だが。

「…外来人ですか。時々、いるんですよ。貴方のように『紛れ込む』方が。」

「何?」

 美鈴の言葉に驚きを隠せない。彼女が言うには、人の住まう「外界」から此処「幻想郷」へと、なんの因果か迷い込む人間が少なからず居るらしい。少し前にも、オラクルと似たような「大きな人形」と、それの乗り手が数名迷い込んだそうだ。

「一人は一度お会いしたことがあるんですけど、バケツのようなものを被った男性で、名前が確か…ジャック…王とかなんとか。」

「…ジャック、か。」

「お知り合いかと思ったんですが、違いましたか?」

「いや、違わない。…とりあえず、もう一つだけ教えて欲しいんだが。」

「まあ、わかる範囲でしたら…。」

 では、と一息ついて問いかける。『化け物』とは何なのか。
エヴァンジェ等の居た世界とは別の世界というのならば、ACに類似する兵器などが早々あるとは思えない。
それに何より、目の前の少女はACを『人形』と呼び、対照的にかつて相対したらしい、ACに似たそれを『化け物』と呼んだ。ほぼ確実に、『化け物』は人の搭乗する兵器を指してはいないと踏んで良いだろう。
 となれば。

「無人兵器か何かか? AC…いや、この機体と似ていると言ったが。」

 少しの沈黙を挟み、美鈴が口を開く。

「それかは判りませんが、えーと…色や姿は違っていましたけど、脚が無い、というか台座のような物に上半身が付いたような形をしていて。赤と青の二色で、背中に砲が二つ…体の各所に蒼く輝く部位があって…腕が剣のような形をしていました。恐らく、外来のモノです。」

「…パルヴァ、ライザー…」まさか、そんな馬鹿な。そう呟く男の表情が青ざめる。
 一瞬、ジャックがしくじったのかとも考えたが、もしそうであれば『アレ』が猛威を振るっているのは元々いた世界の筈。となれば一度は破壊ないし、機能停止にまで追い込んだと考えるのが自然であろうか。
 だが、そうなると余計に、自分やパルヴァライザーが幻想郷に迷い込んでいる理由が分からなくなる。此処は死後の世界とでも言うのであろうか。

「そればかりは、私には判りません。ただ、もと居た世界で死んだと話す方や、外で役目を終えた物が流れ着く辺り、外の世界の方にとっては死後の世界と言っても良いのかも知れませんね。」

 苦笑い。まあ、一介の門番に、そもそも世界の全てを問う事が間違いだったのかも知れないが、それでも。
何も情報を得る事無く、行く当ても無しにただ彷徨うよりは、よほどマシだろう。
もしかしたら、状況を掴む前にパルヴァライザーと接触してしまう可能性だってあったのだから。

「そうか。…礼を言う。どうやら元の世界に帰る当てもないようだし、身の振り方はこれから考えるとしよう。…それからもう一つ聞いておきたいのだが。」

「なんですか?」

「今は『地球暦』何年だ?」

「地球暦? …西暦じゃないんですか?」

「…やはり、か。余りに話が通じないから妙だとは思っていた。」

 アーマード・コアを人形と呼び、パルヴァライザーを化け物と呼ぶ。そして、無人兵器という呼称にあからさまな疑問符を浮かべた辺り、ただの『内』と『外』の関係ではないだろうとは考えていた。
そして、露骨な地名の違いもある。
 彼女の言うとおり今が西暦であるならば、自身は何の因果か命をつなぎ止め、今は『過去』の世界に居ると考えていいだろう。

「…幻想郷というのは、過去や未来の世界の人間でも…迷い込むものなのか?」

「…私には。」判りかねます。そう困ったように笑う。
 またそれか、と毒突きたい気持ちもあるにはあったが、つい先程自身が至った考えを思い出して頭を振る。住む人間がその世界の全てを知る訳もないという事は、我が身で嫌というほど味わっているではないか。まだ冷静さは取りもどせていないらしい。

「しかし、勝手の分からない場所で、こうして『とりあえずは』話の出来る人間と会えたのも幸運だった。…知人と思しき人物の情報も得られたのだから。」

「人間、ですかー。」

「…何?」

「いえ、何でもありません。まあ、確かに出てきたのが此処なのはある意味幸運だったのかも知れませんね。」

 どういうことだ、と問いかける時間はなかった。

「命が惜しくば動かない事です。」





 背後から投げ掛けられる、冷え切った女性の声。
殺気への反応が遅れたというより、殺気を感じた時には既に手遅れだった、と言った方が正しいのだろう。首筋に添えられたナイフは、確かに直前までは存在しなかった物だし、なにより此程の至近距離に来るまで、気配に気付かなかった事自体に違和感を感じた。

「…何者だ?」

「それはこちらの台詞、と言っておきましょうか。」

「…エヴァンジェ。お前達が言うところの『外来人』だ。」

「ふむ。」

 少し驚いたような表情を浮かべたが、直ぐに先程までの無表情に戻り淡々と話し出す。

「…私は十六夜咲夜、この館のメイド長をしております。…そこの人形も貴方の持ち物と言う事ですか。その様子では、幻想郷に来て間もないのでしょう?」

「察しが早くて助かる。それで、私をどうしてくれるつもりだ?」

 少し考え込んでいるのか、ナイフが首元から遠ざかるのを感じた。

「そうですね。早急に出て行って頂ければ、こちらとしては大助かりですが。」

「だが、此方としては死活問題である以上、情報も無しに余り動きたくはない。」

 事実、今話している少女等も普通の人間ではないようだし、こんなのが山ほど居るとなると、いくら何でもACを軽々しく動かしている訳にもいかない。燃料も弾薬も、この状況に置いては貴重品なのだから。今は、これを消費出来る『非常時』ではない。

「平行線ですね。実力行使で追い出しても構いはしませんが、その前に一つ聞いておきたい事もあります。」

「…何だ?」

「その人形を持っていると言う事は、ジャックとかいう男の知り合いですか?」

「…随分と有名なんだな、そのジャックとやらは。」

「ええ。それに似た人形で空を飛んでいたと言う目撃情報もありますし、何よりあの男の面は印象的ですから。」

「面?」先程から気になっては居たのだが、聞くに聞けなかった。
 自分の知っているジャック・Oは普段から面を着けるような若干あれな趣味を持つ人間ではなかったのだが、ACの目撃情報がある以上、自分以外のレイヴンが同様に『迷い込んでいる』可能性は大きい訳で。更に言うなら、『ジャック王』等という恐らく勘違いであろうフルネームのお陰で別人の可能性の方が否定しづらい状況である。

「面です。…そういえば外れない、とも言っていましたね。」

「っ…。」背筋をぞくりと、薄ら寒いものが走り抜けた。慌ててヘルメットに手を掛ける。顎のロック部分を解除せずに外そうとした為、一瞬つっかえるが、ロックを外すと抵抗もなく脱ぐ事が出来た。どうやら『ジャックのように』ヘルメットが外れない訳ではなさそうだ。

「…コレなら、普通は外せるはずだが。外れない、というのは聞いた事がない。」

「それとは随分趣が違いましたが、同じ物なんですか?」

「趣が違う? どんな物をつけていたんだ?」

「えーと、こういう縦長の、筒みたいな面でしたよ。」美鈴が両手を使って表したのは、決してヘルメットなどではなく、そして元の世界でも面など存在しなかったAC頭部パーツの形。
 筒型というところからみても、恐らくフォックスアイの頭部パーツ・クリケットをそのまま被っているのだろうと言う事は想像に難くない。

「難儀な物だな…幻想郷に迷い込むというのは、そんなとんでもない弊害もあるのか。」

「私共は聞いた事もありませんが。」

「…ですね。」

「ならば、ジャックだけがそう、という事か。…訳が解らんな。」

 そう言って、やれやれと肩を竦める。それを見遣り、改めて顔を見合わせる美鈴と咲夜。

「とりあえず、此処で立ち話というのもなんですし。」

 お嬢様と会っていかれます? 華人小娘は諸手を打って笑みを浮かべた。



-続く-
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