スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/--(--)
スポンサー広告

Act.002 『Stray』

カイの呼び出しに応じ、事件現場近くへと足を踏み入れた一人の女性。
聖騎士団の制服を身に纏い街を歩く彼女は、丁度近くを通りがかったソルと出会う。
遅れて到着したカイを含めた三名は目撃情報を元に、ノーティス等の逃げ込んだ宿場街へと向かう。

一方その頃。現場を離れたノーティス等も、GEAR研究の被験者候補リストを手に、「これから」の話を始めようかといったところ。




第二話、これより開幕です。
 抜けるような青空。だがそれは、今は決して気分を晴れやかにするものではない。

「…さて、隊長は何処かしら。」

 黒い長髪にモノトーンの聖騎士団制服。
左手に荷物と、一振りの剣。それらを携え女性は宿場街へと向かう。
私用で呼ばれた事になっているため、迂闊に警察機構内部の宿泊施設を使う訳にはいかなかった。



―――Guilty Gear XX ~GOLDEN EYES~


Act.002 『Stray』



「武器の持参を始めとした対GEAR戦闘の準備、か。…指揮個体にしたってあの人と部下数名がいればよほどの事がなければ大丈夫なはずなのに…」

―そう呟く彼女の名はアルト・フォードマン。カイの部下にいた事もある警察機構の人間であり、元聖騎士団員でもある。炎の法力使いであり、剣術を得意としている。

 ぼやきながら歩いていると、視線の先に見覚えのある制服姿が。

「…アレ、もしかして聖騎士団の…?」

少し歩く速度を上げる。

「あの。」

「…ん?」追いついた先にいたのは、赤い服に身を包んだ長身の男、ソル。
 声を掛けられた事自体に、あからさまに不愉快そうな表情を見せる。

「その格好…聖騎士団…いえ、警察機構の方ですか? 二、三聞きたい事があるんですけど。」

「チッ…うざってえ。」

「…カイ隊長がどちらにいるかご存じです?」

ソルの眉間に皺が増える。

「…アイツの部下か?」

「知っているんですか?!」

「…これ以上関わるなと言っておけ。…居場所は知らん。」

 言い捨てて歩を進めるソルの腕を掴み、制止する。アルトの瞳が強い光を放っていた。

「…気が変わった。何を知ってるのか、教えて貰えないかしら?」

「テメエ…。」

 視界の端に一瞬映る切っ先に反応し、一気に距離を取る。彼女だから助かったようなものの、並の人間では首を飛ばされていてもおかしくはなかった。
振り抜かれた剣と、それを持つソルの足元には、焔が揺らめいている。

「…封、炎剣…まさか…!」

「そのまさかですよ。」鋭い声が聞こえる。
 少し遅れて、アルトの背後からカイの姿が現れた。その瞳には呆れと怒りがない交ぜになって映っている。

「やれやれ、少しは遠慮したらどうなんだ、ソル。」

「…アレで死ぬ人間が聖騎士団に居るか。」

「そういう問題じゃないだろう。…何を掴んだ。」

「特に。」

「そうは見えないな。…お前も、目撃情報を得たのか。」

 立ち去ろうとしたソルの足が止まる。振り向きもしないまま、小さな溜息を吐いた。

「…。だとしたらどうする?」

「同行させて貰おう。お前一人置いていたら、何をしでかすか分かったものではないからな。」

 舌打ち。明らかに機嫌を損ねた様子のソルだが、そんな事は意に介さず封雷剣を握り直す。

「…それに、どうやら私達を放っておいてくれる訳ではなさそうだ。」

 数瞬遅れて、アルトも戦闘態勢をとる。ソルの方は既に準備万端といったところか。

「…人の気配では無い…?」

「ッ…この感じ、あの偽物か…!」

『ギギギ………。』

 機械的な唸り声。じわじわと距離を詰められている、どうやら囲まれているらしい。話に夢中になって囲まれるまで気付かなかったのは手落ちだが、それを抜きにしても。

「この程度の戦力で我々に向かってくるとは…」

「チッ、舐められたモンだ。」一閃。飛び掛かってきた人影三体を一撃で屠る。がらがらと金属音を掻き鳴らし、それらの残骸が地に落ちる。

「隊長…の偽物?!」

「終戦管理局まで絡んでいるというのか…!」

 三体、六体と数を増やし攻撃を仕掛けてくるが、それらに翻弄される事もなく的確に急所を突き、ロボカイを撃破していく。どうやら自我を持った『例の』個体は居ないようだが、それ故、カイの擬きであるこれらの動きに薄ら寒さを覚えた。

「…邪魔だっ…ガンフレイム!」

 強力な火柱が地面から立ち上り、正面にいた個体が消し炭となる。

「凄い…ちッ!」背後から突き立てられんとする剣を躱し一閃。
 翻された刀身は西洋剣にも見て取れる姿だが、切れ味、速さは完全に刀のそれであった。

「…やはり、貴方を呼んだのは間違いではなかったようですね。」

「光栄です。それで、これからどちらへ?」

「ふむ…のんびりと聞き込みをさせてくれそうにはありませんね。」

「聞き込みなんざ蹴散らしてからやりゃあいい。」

「…同感だな。」そして、二人は背中を合わせる。少し離れた場所にいたアルトが意図を察知し、向かってくる内の一体を踏み台にして高度をとった直後、『それ』は放たれた。

「ライド・ザ・ライトニング!!」

「タイラン…レイヴッ!!」

 強大な雷撃、そして、火焔。轟音が鳴り響き、炎が舞う中には三人以外に動くものはなくなっていた。

「これが…。」

 聖戦で最前線に立ち、数多のギアを葬った者達の、力。
自身も彼等ほどではないにせよ修羅場は潜っており、対等とまでは行かなくとも、それなりに近い力を持っているのだという自負はあった。
 聖騎士団にいた者として、ギアと戦い五体満足で生き延びた者としての自信が。

「…終わりか。」

「…そのようだな。」

いとも簡単に砕け散った。

「…さあ、行きましょう。私達だけではなく、容疑者の少女と同行している人物等にも同様の追っ手が差し向けられていないとも限りません。」

「…は、はい。…」格が違う。口に出しかけた言葉を飲み込む。口に出してどうこうなるものでもないし、今は弱気になっている場合でもない。
 今はただ、彼等が味方である事を喜ぼう。自分の愚痴なんて、やる事が終わってから存分に吐けばいい。それだけだ。
先に歩く二人を追って。荷物を抱え直し歩いてゆくアルトであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「シャワー使わせてもらったわ。」

「お、お帰りなさい。」濡れた髪をかき上げる仕草。インナースーツだけを着用して出てきたノーティスに気付き、慌てて目を逸らすブリジット。

「…同性なんだし、そこまで意識する事じゃないでしょ? そこの優男は別としてさ。」

「流石にそんな趣味はねえっての。んで、これからどうする?」

「情報収集、かな。情報は多めに持っておきたいし…それに、気になる事もあるしね。」

「気になる事?」

 銀髪の少女が問う。

「そ。…記憶が正しいなら、の話だけど。」

「心当たりがあるんですか?」

 今はまだ、確信は持てない。そう呟き、テーブルに置かれていたコーヒーに口を付ける。

「どうです? ウチが淹れたんですよ、それ。」

「そうなの? ありがと、おいしいよ。」

 一瞬だけ、彼女の顔が綻んだように見えた。だが、直ぐに先程までの冷めた表情に戻ってしまう。

「で…だ。その心当たりとやら、聞いておいてもいいか?」

「…。」

 アクセルの瞳が強い輝きを放つ。面倒臭そうに溜息を吐き、視線を外すノーティス。
その瞳は窓際に立て掛けられた剣を見据え。

「そうね。」

「ッ?!」反応が一瞬遅れる。伸ばされたブリジットの手を躱し、一気に床を蹴り大剣に手を掛け、再度駆け出す。
次の瞬間には、アクセルに向けて切っ先が突き出されていた。
 そして、金属が打ち鳴らされる音。二人分の体重で微かに軋む床板。滴る水滴。

「…テっメエ…」

「…良い反応。躱してくれなくても当てる気は元々無かったけどね。」

 鎖を掠めて男の後方に伸びる切っ先は、その先、開かれていた窓から飛び込んだ人影を貫いていた。傷口から血液が流れてこないところを見る限り、ぶら下がっているのはどうやらヒトではないらしい。

「…さて、私のあってるかどうか分からない心当たりより、コイツ等を締め上げた方が早いと思うけど。どうする。」

「良い趣味してるじゃねーの…ま、そっちの方が早いってのには同感だ。いっちょやりますか!」

 胸に剣を突き立てられたままの人影を蹴り、窓の外へと吹き飛ばす。
閉所には向かない武器の使い手が、室内に留まって戦う理由は無かった。

「お先。」アクセルの肩を蹴り、窓から外へ飛び降りる。

「てっ!…三枚目だと思ってこの扱い?」

「アクセルさん、先に行って下さい! ウチは彼女を。」

「OK! 頼むぜ!」振り返り窓から身を乗り出すアクセル。さほど高さはないとはいえ、二階部分から飛び降りるには少し勇気が要った。
 重力に従い、体が地に落ちてゆく。数秒の間を経て地面に降り立ち、鎖鎌を構え直す。
場合によっては、この場所を離れる事も選択肢に入れる必要があるように思えた。

「…さ、ウチ達も準備をしましょうか。今は動く必要もないでしょうけど、このままずっと此処にいては、他の方を巻き込んでしまいますから。」

「そう、ですね。」

「ごめんなさい。ですけど、もう少しだけ、我慢してて下さい。ちゃんと家に帰れますから。」

「…はい。」小さく頷く少女。

 窓が二つ、そして、部屋の入り口の扉。
そのそれぞれに意識を向け、ブリジットは得物であるヨーヨーを構えた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「カイ隊長! 彼処…!」先行していたアルトが通りの一角を指差す。
 街の中心から外れ、人も建物も疎らな一帯。自分達のいる場所から、ほど近い家屋の一つの窓から、三つの影が飛び出してきた。

「あれは…急ぎましょう!」

 そう言って駆け出し、数十秒と経たないうちに目的の宿場に辿り着く。
どうやら戦闘が行われているのは屋外のみらしく、建物の中は静かなものだ。

「チッ」

到着するや否や、迷うことなく裏手の方へ走り去ってゆくソル。

「ソル、待てっ! 全く…私は中へ。アルト、貴方は彼に同行して下さい。後ほど私もそちらへ向かいます。」

「は、はい。」

 戸惑いながらもソルを追って駆けて行くアルトを見送り、小さな深呼吸の後、宿場の扉を叩くカイであった。

「失礼します。警察機構の者ですが…。」

 テーブルの花の手入れをしている最中らしい手を止め、向き直る中年程度の女性。
恰幅の良いその姿とは裏腹に、瞳には不機嫌そうな色が見えた。

「…警察の兄さんが何の用だい?」

「お忙しいところすみません。…此処から少し離れた場所で殺人事件がありまして、加害者と思われる人物がこの近辺へ逃走中との情報が入ったのです。」

「はぁ。で? ウチにはそんな殺人犯なんて来てないよ?」

「そうですか。…とにかく、緑髪で金色の瞳、身長160㎝ほどの少女を見たら私の方へ知らせて下さい。」

 カイの言葉に、女性の眉がぴくりと動く。

「…見かけたらね。」

「ええ、お願いします。…それと。」

「…何?」

 携えていた封雷剣に両手を添える。それを構える事はしなかったが、カイの鋭い視線が警戒心を露わにする女性を射抜く。

「貴方が匿っている少女は今回の事件の加害者である可能性が高いですが、同時に何者かに狙われています。現に今、裏手に追っ手の姿もありました。」

 言いながら、剣の握りを順手に変え、軽く振り下ろす。
彼を動かすのは、「正義」と「信念」。こんな所で民間人を巻き込む事は、そのどちらにもそぐわない。

「申し訳ありませんが、これは警告です。今すぐ彼女等の元へ案内して下さい…でないと、取り返しの付かない事になりかねません。」

「………名前は?」

「…カイ・キスク。」

「聖騎士団の団長さん、か。…信じて良いんだね?」

「ええ。それに、予想通りの人物であれば、彼女は私の知り合いです。…部屋へ、案内して頂けますか?」

 しばらく考え込むような仕草を見せていたが、やがて小さく。だが、しっかりと彼女は頷いた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「…静か、ですね。」

 二人きりの室内。窓の外から聞こえてくる戦闘の音以外は、自分達の呼吸しか聞こえない。

「あのお二人は、まだ…」

「戦っています…大丈夫ですよ、あの二人なら。とにかく、ウチ達はまだ迂闊には動けません…もう少し、我慢してて下さいね。」

「…はい。」

 また、沈黙。それから数分経ったところか。
部屋の隅に背中を預けるブリジットの耳に、微かに足音が聞こえる。一つは恐らく宿場の女性のもの。もう一つは…

「下がってください!!」

 扉の方へ飛び出し、ドアノブに手を掛けヨーヨーを振りかぶる。
瞬間、空を切り裂く音が二つ、静かだった室内に響いた。

「っ……!」

『く…!』

 次は当てる。その意志を代弁するかのようにもう一つのヨーヨーが放たれる。しかし、聞こえた音は無情にも、金属同士がかち合う音であった。

「やるっ…! …この技、ブリジットさん、か…。」

「え…あ、カイ、さん? どうして此処に…」

 呆気に取られたような表情を浮かべる。目の前にいたのは警察機構の人間、しかも顔見知りときた。
少なくとも、この場では信用に足る人物と呼べるだろう。

「それはこちらの台詞です。貴方がどうして…」一瞬考え込んだカイだったが、直ぐに合点がいく。
 そうだ。彼女…いや、彼の姿を一目見て男性だと気付く人間の方が少ないだろう。
だが『シスター姿の少女』という目撃証言の特徴は、ブリジットにも十分に当てはまるのだ。

「…そうか、賞金首から逃げていた少女というのは…」

「…そうみたいですね。という事は広場のことは?」ええ、と小さく頷き宿場の女性を一階へ避難させるカイ。
 賞金稼ぎとして各地を飛び回る知人との再会を喜びたい所であったが、生憎とそうは行かないらしい。

「はい、既に大きな捜査隊が編成されつつあります。ただ、少しきな臭い動きもあるため、あなた方には我々と行動を共にして貰いたいと思いますが…構いませんか?」

「ええ…ウチは大丈夫です。」

「…私も、大丈夫です。」

「こちらの方は?」

「クリス・メタリカさんです。賞金首に攫われそうになっていたところをウチが助けた人で…その。」

 言いにくそうに一つのファイルをカイに手渡す。疑問符を浮かべながらもそれを受け取るが、直ぐにその表情が険しいものへと変わった。

「…なるほど、過去に数度起こった失踪事件も、これが目的だったという事か…!」

「失踪事件…?」

「ええ。数ヶ月前から、近隣の街で何度か少女等の失踪事件や、誘拐の未遂がありまして。警戒態勢をとってはいましたが、誘拐犯は皆個人の犯行だった事もあり、さほど関連性は追究していなかったようです。」

「もしかして」小さく呟くブリジットの瞳には恐怖と、それを遥かに上回る怒りが見える。

「はい。…こちらのファイルには、過去の事件で失踪した少女の名前が、ちらほらと。」

「ゆる、せない…GEARの研究なんかのためにこんな事を…それだけじゃない!! 彼らは…彼らは…っ!!」

 手袋に血が滲むほど強く握りしめた拳、固く結んだ口元。俯く少年の瞳は、涙で滲んでいた。
 俯くブリジットの手を細い指が包む。手を取ったクリスはなにも言わず、ただ小さく微笑んだ。

「…その辺りの清算も含めて、何としてもこの研究の元締めを捕らえなければなりません。」

「…はい。そうですね。」

「とにかく、下の彼等と合流しましょう。その後態勢を整えて、情報収集を本格的に始めます。」

「『彼等』?」

「私以外にも二人ほど、こちらに来ています。心強い戦力になりますよ。」

 カイの言葉に安堵の表情を浮かべ、小さく頷くブリジット。荷物から重要度の高い物だけをとりあえず身に付け、裏口の方へ駆けて行くのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 大剣が唸り、鎖鎌が空を切り裂く。個々の強さはさほどでもなかったが、その数の多さが精神的な疲れを呼んでいた。

「全く、強くもないクセに数ばっか…しかも人間が居ないってんじゃ情報収集にもなんないっての!」

「同感。俺様こんな作業したいワケじゃねーんだけどなぁ。」

 愚痴をこぼしながらも敵を処理し続けるノーティスの視界の隅に、ちらりと別の人影が映る。

「…見つけたっ♪」

「あ、おいっ?!」アクセルの制止も無視し、一気に駆け出す。朝露に濡れた地面を強く蹴り、目の前に現れるロボカイを打ち砕き、その先で此方を窺う『クソ野郎』を捕えんとして。

『っ?!』

「逃がすかっての!!」

 背を向けて駆け出す人影を見据え、更に加速する。最早ロボカイは障害ですらなかった。

「…っぁぁぁあああああああ!!」

 首に手を掛けようとしたその刹那、強い殺気に思わず足を止める。
直後、首筋に突き立てられた切っ先と、一瞬で叩き伏せられる人影が視界に入った。

「っ…!」

『…馬鹿が。情報も探らずに殺す気か。』

聞き覚えのある声。

「本当に当たりなんでしょうか…?」

「…さあな。外れだったなら逃がすだけだ。」

「ソ…ル…?」

「いきなり突っ込みすぎ…ってダンナぁっ?! 何してんのこんなトコで?!」

 遅れて駆け寄るアクセルの素っ頓狂な声が聞こえる。ノーティスを制止したのは、先ほどカイと別れたソル、アルトの二人だった。

「それはこっちのセリフだ。…なんでテメェまで居んだ…。」

「まあ、チョイと巻き込まれちってね。」

「たっ、助けてくれ!! 俺はなにも知らねぇ、あのガラクタとは無関係なんだ!! だからっ、頼む!! 見逃してくれ!!」

 ソルに首根っこを押さえ付けられている男が声高に叫ぶ。その言葉を聞いた直後、幾人かの瞳が鋭く光を放った。

「…私、当たりかどうかしか聞いてませんし『ガラクタ』とやらの話はしてませんよね。」

「それは…もう一人の嬢ちゃんから逃げる時に出てきて…」

「脇目も振らずに逃げた上、俯せに叩き付けられてるのによく私の邪魔をしたのが『ガラクタ』だって解ったね。」

「そ、それは金属の音がしたから…」

「打ち合いかもしれないでしょ?」

「関係あるかよ! とにかくあんな薄気味悪い人形とは無関係なんだ!! だから助けッ」

「ビンゴ。そんなに命が惜しかった? 焦って饒舌になってちゃあ意味無いけど。」

 言いながらソルに組み伏せられている男に歩み寄る。

「ひぃっ…!!」

「さ。知ってること全部吐いて貰おうかな?」

「そこまでです、ノーティス。」
 鋭い制止の声。アクセルの後ろからカイと、その後についてブリジットとクリスが歩いてくる。

「…貴方も居たんだ。」

「ええ…彼は?」

「たぶん『関係者』。そこの二人を拐おうとした連中のお仲間ってトコじゃない?」

その言葉を聞いて眉をひそめる四人と、身体を強張らせる二人。

「…気付かないと思った? アンタもAクラス、DoAでしょ?」

「っ…!!」

話しながら、俯せに倒れる男の眼前へと歩いて行く。

「リスクを減らす為に足のつきにくい賞金首、特に逃走期間の長い高クラスを金で雇って、ってところかしら。分かりやすいやり口だね。誰から頼まれた?」

男のすぐ側へしゃがみ込み、冷たく言い放つ。答えようと答えまいと、お前の末路は決まっているんだと言いたげな表情で。

「…ク、ソがぁっ!!」

 辛うじて自由に動く右腕を使い、男は腰に携えたナイフを抜き、目の前に見える脚へ突き立てる。ノーティスはそれをかわそうともせずに。ただ、自らの左足へ突き立てられたナイフを、表情一つ変えずその手で抜き取った。
そして。

「ッ」

 鋭く空を切る音、そして次の瞬間。男の指が二本、無くなった。

「ぎャぁぁぁあああああああああああッ?!!」

「ノーティスっ!?」

「喚いてる暇あるんならとっとと飼い主とその居場所吐きなよ、クソ野郎。」

「次は耳あたりでも落としてやろうか?」そう言って、薄ら笑いを浮かべる。

「やめとけ。何も吐けなくなるのがオチだ。」

 底冷えするような低いトーンの声。ソルから発せられる威圧感にたじろぎ、反論することもなくそれに従う。しないのではなく、できなかったという方が適当であるが。

「…わかった。」

「テメエはそこの連中連れて引っ込んでろ。」

「ソルっ…いや、そうだな。彼女等をこのまま外に居させるのも良くないだろう。…部屋に戻りましょう、互いに掴んでいる情報を擦り合わせる必要もありますので。」

「…」

「テメェもだ、クソガキ。」

「私は……っ…。」

 渋々といった様子で、ソル等に背を向けるノーティス。不安そうにそれを見つめていたアルトは悩んだ末、その場に留まることを決めた。

「…彼女、お二人と知り合いなんですか? さっきのあの目…微塵も躊躇いがなかった。あのまま放っていたら…この男は」

「だろうな。」

「だろうなって…大方、賞金首の惨殺も彼女の仕業なんじゃないですか? いくら被害者がDoAとはいえこのまま見過ごすのは…危険だと思いますが。」

溜め息が聞こえる。

「どちらにしろ、テメエじゃ無理だ。アレはそんな簡単な相手じゃねえよ。」

 釈然としない表情を浮かべるアルト。所在なげに辺りを見ていたが、ふとある事実を思いだし、ソルに問いかける。

「そういえば彼女の服装。…聖騎士団所縁の物ですよね。」

「…それが?」

「これでも私、結構過去の文献なんかも読む方でして、団内部の記録資料なんていうのも目を通しているんです。」

「へぇ。で?」

「丁度大きな戦果を上げた団員のデータも記録されていまして、そこに彼女とおぼしき人物の記述もありましたよ。大剣を操り並み居るギアを薙ぎ払う、暴風のような戦い振りの、緑髪、黄金の瞳を持つ少女。」


そして、小さく息を吸い込む。


『Golden Eyesって二つ名と一緒に。』


―File No.002 -Stray- end.

―Continued to File No.003 -Nickname-
スポンサーサイト















管理者にだけ表示を許可する


| ホーム |
Page Top↑
▲ Page Top
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。