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ユウキ×オサナナジミ×コイゴコロ

最近立て続けに掌編カテゴリを更新してる気がします。AC少女詰め合わせもちゃんと進んでますよ!

でも今回も掌編を一本。優希と御月の、ちょっと真面目なお話です。砂糖吐くような甘い感じの話ではないと思います。それでは追記から。
「ね…ねえ、御月?」

「ん?」

優希の部屋。ギクシャクした様子の二人。すでに日も傾き始め、部屋が朱に染まっている。

「今日、ね。実は、父さんも母さんも居ないんだよね…明日まで帰ってこないってさ。」

「あ、ああ。…でも、お前の兄貴は帰ってこないのか?」

言ってから、少し後悔した。元々そういった機微に弱いのは確かだが、今のは駄目だったんじゃないかと。直感的にそう感じた。

「う、うん。帰ってこないよ。今日は私一人なんだ。」

「そう、か…」

なんと言葉を掛けるべきなんだろうか。多分、こうじゃないかという答えはある。

でも。踏み込む『ユウキ』を持てない。傷付けたくないのか、傷付けられたくないのか。

「うん。…あの、さ」

「なあ、時間も時間だし腹減っただろ? 良かったら何か作るぞ。」

「っ…うん。じゃあ、カレーがいいな、私。」

「そうか…わかった。」



―逃げるように、なんて言葉がピッタリだった。あの場で答えを出すのが怖くて、今こうして逃げてきた。



―でも、それじゃあどうすればよかったんだ? アイツの気持ちも、なんとなく想像はつくし、正直な話そういう期待をしてしまっているのが自分でもわかる。



―だからといって、感情に任せて、なんて事は出来ないし。したくない。



―それに、アイツを…傷付けるようなことになったらと思うと。



「…はぁ。…俺も大概馬鹿なんだろうな。多分。」

台所に立ち、ポツリと呟く。自嘲気味に笑った所で、考えは別にまとまりはしない。

「…痛っ。」

左手の親指に赤い線が走る。それから少しの間を開けて、階段を降りてくる足音。

『手伝うよ。…御月?』

「どうした?」

「どうしたじゃないよ、指切ったの?」

大した怪我じゃないと笑う御月を諌め、救急箱を持ってくる。

「…珍しいね、御月がキッチンで怪我するなんてさ。」

「そ、そうか…?」

「うん。…ゴメンね。」

「え?」

傷口を消毒し、絆創膏を巻く優希の指先が止まった。

「変なこと言っちゃってさ。困らせちゃったよね、御月の事。」

そう言って、少し悲しそうに笑う。まだ左手に触れたままの指が、震えているのが分かる。

「…そういう訳じゃないよ。…その、心の準備が、ちょっとな…。」

「そっか。ありがと。さっきのは気にしなくていいよ、どうせ一晩だけだし一人でも大丈夫。」

「…。」

「とりあえず続きやろっか。せっかくだし御月も食べてってよ。」

「…ああ。」



無言のまま支度も済み、夕食も、気まずい雰囲気の中終わる。
そのまま片付けも済ませて、二人は優希の部屋まで戻っていた。

「ありがと、食器まで手伝ってもらっちゃってさ。」

「…別に礼を言われるほどの事じゃ…。」

「ちょっと無愛想だね、御月。」

「そーかよ。」

「あはは、ヘソ曲げないでよ。…ねぇ」

「あの、さ。」

台詞が被る。互いにバツが悪そうに視線をそらす。

「…私は後でいいよ。」

「そっか、悪い。…それでさっきの事だけど、良かったら…泊まっていってもいいか…? えーと、だな…やっぱり一人きりにはしたくない、というか……その、もし二人きりなのがイヤだったら、ウチに来てくれても……あっ! いや、今のは忘れてくれ。ごめん。」

「…怒ったりなんてしないよ。それでその…泊まってくれるなら、嬉しい、かな。…えっと…その…き、今日は…っ」

心拍数が上がっているのがわかる。既に、息のしかたを忘れそうになるくらいには、思考が働かない。

「そのっ…ふ、ふたっ……すー…っ…はー…っ」



―――二人きりっ、で…い、居たい…から…さっ―――



頭が真っ白になる。

「…」

「~~~っ…」

「優、希…?」

「ふぇっ?!」

顔中を真っ赤に染めたまま、今にも泣きそうな表情でこちらを見ている優希の姿に、既視感を覚えた。



―多分、中学生になった頃にはもう、明確な好意があったんだと思う。『ただの幼馴染み』を、いつの間にか『一人の女の子』として見ている自分に気付いたから。



―それを意識してしまった事は正直辛かったが、それでも嬉しさの方が大きかった。自分は『幼馴染み』だから。
小さな頃から、他の誰よりもアイツの近くにいたし、そうやって『幼馴染み(トクベツ)』でいる限りは、アイツの傍に居られると思っていたから。



―それでも、『コイビト』じゃない。傍に居ることと、隣にいることは違う。そんなことは最初から解っていた。
でも、結局は二年の月日を、傍に居ることで妥協したまま踏み出せないでいたのも事実だ。結局告白したのは、卒業式の日。



―ロマンチック? 逃げて逃げて先延ばしにした結果が、相手にとってそうだって言うなら、多分、それでも良いんじゃないかと思う。
だけど逆に、結局そうやって、長い間辛い思いをさせていたというのなら。



―…少なくとも、そんなモノ、ロマンチックなんて言葉なんかで誤魔化しちゃいけない。



「…そういえば、さ。」

「…?」

小さく首を傾げる。

「その…ずっと前、告白したときも。…そんな顔してたよな、お前。」

「…えっ…? そう、だっけ…」

「ああ。…ごめんな、また待たせて。…こういう話するの、苦手だからさ。」

「…っ!!」



―――なんで…もっと早く言ってくれなかったの? ホントに、待たせ過ぎだよ…バカ。―――



―御月は、あの頃からそうだった。何度か他のクラスの男子から告白された時も。彼は不安げな表情を少し見せるだけで、断って欲しいなんて言葉は一度も言ってくれなかった。



―こんな考え方、自分勝手なのはわかってる。それでも、好きな人に想われているのなら、その人の前ではヒロインでいたいのが、女の子だから。
私は、御月ひとりにとってのヒロインになれればそれだけで充分だった。『好きだ』って一言が、限りなく欲しかった。近いだけじゃダメだったんだ。



―朝も夜も恋い焦がれて。『幼馴染み』以上に進む勇気を持てなかった自分が辛くて。一度だけ、諦めようと思った事もある。
だけど、なまじ距離が近すぎるから、割り切ることもできなくて。



―どうしてこんな中途半端な関係なんだろうって、泣いたこともあった。いっそ他人なら、玉砕する覚悟だってできたのに。
ずっと好きだった人に嫌われたらと思うと、踏み出す勇気なんて持てなかった。



―私さ。元々器用なタイプなんかじゃなかったから。
一人の人を、ずっと好きでいて。
その人のために、傍で笑っているくらいしか、私にはできない。



「…ねえ、御月。」



―だから。私はアナタに問うんだ。



『これからも、御月の隣にいていい…かな…? …ずっと。』



おしまい。
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