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mission005《アリーナ-ARENA-》

二つの依頼と、初めてのアリーナ。依頼の受諾期限は今日一杯、そして明日にはアリーナでの戦闘が待っている。

依頼は受けずとも構わないし、自信があるなら受けた上でアリーナに臨んでもいい。
ミッションの時刻によってはアリーナ出場を辞退する必要もないであろうが、果たしてシスはどのような行動を選択するのか。


アーマードコア同士の戦いが待つ第五話、間もなく開幕です。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






-五月十二日、10:30。-

新都市区のマンション、高層階の一室。

「それで、どうするかは決まりましたか?」

「ん? ああ、依頼だっけ。」

手元の端末からミッション概要をプリンタへ出力する。
いつになっても、何だかんだで紙媒体は残っているものだ。

「えーと、一つはキサラギから、もう一つはミラージュからね。」




『Armored Core3-Silent Line-"藍深き霧の瞳"』


mission-005《ARENA―アリーナ― 前編》







【ミッション概要①】

ミッションコード:FIREFLY SQUID

依頼主:キサラギ

主目的:地下資源を運ぶ大型輸送艇に同乗、その護衛。

作戦地域:旧都市区、資源輸送艇

想定敵戦力:不明

報酬:前払報酬、11000c(敵が侵入した場合、損害度合によっては報酬減額、もしくは追加報酬有り。)

契約期間:五月十二日、16:00まで。

補足:輸送開始日時は契約完了時にメールにて通知。

                              以上。







「輸送艇の護衛ですか。」

「襲撃がなければ万々歳ってトコロだけど、裏があるかも、とは考えておいた方が良いかしらね。」概要を見ながら呟く。

「裏?」

「どういったブツを運んでいるのか。地下資源とは書いてるけど、実際のトコロは分かんないしね。前払だけしか報酬もない所を見ても、ミッションが終われば…って可能性も捨てきれない。」

「表に知られてはならないモノを運んでいる可能性もある、と?」

「仮定の話よ。最初からそのつもりでないなら、こちらが深入りしなければそれで済む話だしね。」

一時、考え込む動作を見せたエマが再び顔を上げる。

「前払のみの報酬を判断材料とした理由を聞かせて頂けますか。」

「え? ああ、それはほら。成功報酬のみのミッションでレイヴンを始末したりしたらさ、『報酬惜しさに裏切った』って疑惑を持たれるでしょ? 特に防衛任務の類だと。」

「防衛は成功したのに、レイヴンが帰ってこない…」

「そういう事。同じミッション結果でも、先に報酬を払ってるかどうかだけで大きく印象は変わる。前払のみのミッションじゃ『報酬が惜しい』なんて思われないでしょ?」

「そもそも不自然ではありますけどね。」そう。一介のレイヴン風情のためにそこまでのリスクを支払って命を奪う必要はあるのか。疑問は残る。

「普通のレイヴン相手ならほぼあり得ない。ただ、この依頼だと『防衛目標』が何かによってはあり得る、ってだけの話。若しくは、影響力が大きくなりすぎたレイヴンを…とかね。キサラギって何か動き無いの?」

言われて携帯端末を操作するエマ。彼女を始めとしたコーテックスの人間には、各企業の大まかな動向が知らされるようになっている。ただし、企業の裁量により公開される情報でしかないため、正確性にはいささか欠けるところがある。

「そうですね…過去にレイヤードで発生した生体兵器との関係が今なお疑われていますが、それ以外は特に。」

「生体兵器?」

「はい。戦闘行動に特化した大型の生物を幾つか作っているんじゃないかという噂はあります。レイヤードの件に関しては正確な戦闘記録も抹消されてしまっているので、私の方からは何とも…。」

「一応注意だけは、ってところかしらね。次見てみましょ。」ガッカリしたような表情を見せつつも、手際よくファイルを捲っていく。二つ目の依頼は、ミラージュからの攻撃依頼らしい。







【ミッション概要②】

ミッションコード:RECLAIMED LAND

依頼主:ミラージュ

主目的:セクション517に集結している不審者の排除。

作戦地域:旧都市区『第三層第一都市区』、放置区域『セクション517』

想定敵戦力:不明(MT、武装車両などよって構成された部隊と思われる)

報酬:成功報酬、16000c

契約期間:五月十二日、17:30まで。

                              以上。







「不審者ねぇ…レイヴン雇うって事は少なくともそれなりの戦力があるって事か。」

「…此処は確か、クレストが以前研究施設を持っていた地域の近くですね。」

「ふーん…」なにやら思索を巡らせている様子。

「どうしました?」

「いや、クレストの差し金かもねー、と。研究施設のデータなんかはやっぱり渡したくはないだろうし、施設の完全破壊をそこらのゴロツキにでもさせてるのか、はたまた回収部隊の類か」

「シス。」険しい表情を浮かべてシスを見遣る。「ん?」少々気圧された様子の彼女を気にすることなく、エマは言葉を続けた。

「そうやって何でも裏へ裏へと物事を想像していくのはクセか何かですか? 一定の警戒は当然必要でしょうけど、逆に深入りしすぎる方が危険は増します。特に、アーマードコアを始めとして軍需に噛むような企業となれば余計に」

「わーかってるって…コレでも色々あったからつい、ね。」

「…色々?」

「そ。…いろいろ。」何処か遠くを見るような目をして、繰り返す。

「…そうですか。」

「ゴメン。これから気をつける。」

「…いえ。」

既に、日は高くなりつつあった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






-同日、12:40。-

遅めの昼食を済ませた二人は、マンション隣にあるガレージへと来ていた。
既に二度の実戦を終えた機体は、照明を受けて銀色の光をたたえている。

「…さて。」

「コックピットを開けてどうするんですか?」

「ちょっとシート周りの掃除をね。コレばっかりは自分でやりたいしさ。」

そう笑って、シートに背中を預ける。まだ二度とはいえ、今後も自分の命を預けるのだから。シスの言葉には何処か、経験則とも取れる空気があった。

「…シス、貴女は。」

「…ん?」

「以前にも、『コレ』で命のやり取りを…?」

「……半分正解。」苦笑い。なるべくなら、もうしばらく黙っていたかったのだが、流石にそうもいかないらしい。

「元MT乗りでね。…最初に会った時、不祥事で口座の資金が、って話したでしょ?」

「ええ。…それも?」

「依頼の失敗とかそういうのじゃないけどね。…アレはホントに忘れたい位だし…。」

「…ふふっ、下らない事だったんですね。」

「…まあ、ね。」小さく笑うエマを見て、バツの悪そうな表情を見せるシス。ただ、それでも話す事は止めない。

「で、何度か裏切りだの何だのを見てたからつい疑り深くなっちゃってさー。さっきはゴメンね。」

「いえ。気にしてませんよ。」

「…それだけ、ってワケじゃないけど…今はこれだけ。」続きはまた追々。そういってコンソールに視線を向ける。エマもまた、それ以上を聞こうとはしなかった。互いに無言のまま、コンソールの操作音だけがコックピット内に響く。
そして、口を開く事はないまま、作業だけを黙々と進めていく。

「…よし、これで終わり。」

「ご苦労様。コーヒーでも如何です?」

「ありがと。」エマの手からマグカップを受け取る。

「…清掃だけではなかったみたいですけど、先程は何を?」

「ん? ああ、FCSの調整をちょっとね。少しだけロック距離を引き上げたのよ、あのままじゃスナイパーライフルが使えないし。」

「…上昇数値は?」

「ざっと120。標準型は融通効きやすいのかしら?」

「確かに結構大きな変化ですね。それで、スナイパーライフル装備時のロック可能範囲はどの程度になります?」

「ん? ああ、まだ見てなかったわね。えーと…」モニターにプレビュー画像が表示される。恐らく狙撃用のFCSを使用するよりもはるかに狭い捕捉可能範囲が。

「…シス、流石にこれで戦闘を行うのは無茶かと…。」

「私もそう思う。」再びコンソールを開き、目盛を調整する。

「…まあ、80程度なら何とかなりそうね。」表示された捕捉可能範囲は狙撃型と同程度。しかし、射程距離は500とない。遠距離と呼ぶには近い最大射程であった。

「結局、右腕はスナイパーライフルにするんですね。」

「ええ。折角だし使ってみたいじゃない。」

「使ってみたいって…」エマの顔には明らかな呆れが。無理もないだろう。何せ初めてのAC戦であり、公式に賞金の出るアリーナでの初参戦というのに、そのような単純な理由で新しく受け取った武装を装備して挑もうというのだから。

「シス、賞金がかかっているんですから…」

「大丈夫…油断はしないから。」そういって不敵に笑う。いくらMT時代からの戦闘経験があるとはいえ、AC戦では勝手が違う。今のエマには、彼女の自信の出所が何処にあるのか、掴みきれなかった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






-五月十二日、22:00。-

日が傾き始めている。
結局、キサラギからの依頼は受諾せず、ミラージュからの依頼のみを受諾する結果となった。

「日程の指示は来た? …桂馬貰い。」

夕食を済ませ、リビングで音楽を掛けながら将棋を指す二人。
二人がそれぞれ座るクッションの側には、先程プリントアウトした作戦資料、アリーナでの対戦相手の戦績表などが置かれている。

「えーと…はい。時刻は明後日、五月十四日0600。移動に関してはコーテックスよりトレーラーが手配されるとのことです。…銀将頂きます、それと角成り。王手。」

「レイヤードの跡地じゃヘリって訳にもいかないわね…了解。あとはアリーナへの機体申請で終わりかしら。…まだまだ。」

「そうなりますね。…歩取り、王手。」

「…」

沈黙。

「待った。」

「ダメです。」

更に沈黙。

「…参りました。」

項垂れるシス。昨日に種類の違うゲームを幾度か挑んでは負けている為、今度こそは! と挑んではみたものの。
結局、今日で二桁目の黒星をつけることになったのである。

「ホンット強いわね…」

「そうでしょうか?」

「でも、ビデオゲームとかはどうなの? そういえば買ったけど未だやってないし。」

「ああ言うゲームはちょっと苦手ですね。何というか、コントローラの細かい操作が…」

「ふーん…じゃあ明日はビデオゲームの方で勝負ね。」

「ちょっとそれは狡くないですか?!」

「傭兵に狡いも何もないわー。」意地の悪い笑みを浮かべるシス。
どうやら勝機を見つけたらしく、ひどく声が弾んでいる。

「む…」

「ま、明日はそもそもアリーナがあるんだけどね。」

「それもそうですね。ところでシス?」

「ん?」

「アセンブルの申請期限、0時までですよ?」

「……直ぐにデータ送ってくる。そんなに時間かかんないと思うけど、先寝てて良いわよ。」言いながら、気怠そうにデータルームへと入っていくシス。それを見送り、腰を上げた。

「お休みなさい、シス。明日は勝ちましょう。」

「…ええ。おやすみ。」

そうして、夜が更けてゆく。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「…ん………?」

-五月十三日、8:30。-

朝。どうやら昨夜、機体アセンブルのデータをアリーナ運営局へ送信後そのまま眠ってしまったらしい。デスクに突っ伏して寝ていたようで、少し背中が痛い。
体を動かしたところで、違和感に気付いた。
意識もハッキリとしてみれば、背中には毛布が掛かっており、ご丁寧にクッションまで頭の下に敷かれている。

「…ありがと、エマ。」

『…どういたしまして。』

「っ?!」背後からの声に驚いて振り向く。しかしその先、扉の方には姿はなく。

「こちらですよ…あふ…。」

直ぐ横の壁に座り込んでいたエマが、寝ぼけ眼を擦りながら起き出していた。

「…部屋で寝てたんじゃなかったの?」

「…つい。」シスと同様に毛布を体に掛け、壁際にもたれ掛かって眠っていたらしい。長い髪は乱れ、強い寝癖がついている。

「………やれやれ。」

「さ、そろそろ朝食にしましょうか。昼にはアリーナへ到着しておきたいですからね。」

「……そうね。」





「…御馳走様。」

「お粗末様でした。…」朝食はハムエッグトーストとコーヒー。二人分の食器を持ってそそくさと食洗機へと向かうシスを尻目に、洗面所へと足早に歩いてゆく。
どうも先程からシスの様子がおかしく、こちらの方をちらちらと見ては笑いを堪えていたような気がするのだ。

「…気付いたかしら。」

その声に遅れて、何かを吹き出すような音と微かに笑い声が聞こえる。つられて思い出し笑い。まるでライオンの鬣のような髪型だったのだ。笑いを堪えるのも一苦労だった。

「…シス。」

「…な、なに?」振り返る。
既に寝癖は直してしまっており、普段通りのストレートヘアに戻ったエマが引きつった笑みを浮かべて立っていた。

「どうして起きた時点で教えてくれなかったんですか?! 分かってれば直ぐに直したものを…!」

「だってその方が面白いじゃない♪ それに洗面所に行けばイヤでも気付くし、大した問題はないかなーって」

「大問題です! 第一、来客でもあったらどうするつもりだったんですか?! 一歩間違えれば色々と笑えない状況でしたよね!」

「ゴメン! ゴメンって! 謝るから!」

騒がしい朝の一時であった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「お久しぶりです。三日振り、でしょうか。」

「試験以来だっけ、無事で何よりね。」互いに生存を喜びあう。この青年が『リトルベア』。シスと一緒に試験を受けたレイヴンであり、あれからは依頼よりアリーナへ重点的に参加しているらしい。

「あなたが今日の対戦相手ですか?」

「ええと、こちらの方は?」

「申し遅れました。私はエマ・シアーズ、そのレイヴンの担当補佐官です。」

「初めまして、リトルベアです。」互いに挨拶を済ませる。明確な敵意こそ無いものの、極端に素人臭い訳でもなさそうだ。少なくとも、対戦で遠慮をしたりする事はないだろう。
そもそもそのような人間がレイヴンになれるのかも、甚だ疑問であるが。

「時間が時間なので挨拶はここまで。行きましょう、シス。」

「ええ。ま、お手柔らかにね。」

「そちらこそ。」





《本日の戦闘エリアはレイヤード第一層第2都市区のアリーナ。敵機体、『ダブルウィング』の機体構成はこちらとなります。》

出撃直前。大型のエレベーターによりアリーナ入り口のゲート前へと向かう機体の中で、アリーナ内管制室にいるエマから送られたデータを参照する。

「フレームはほぼ初期支給、両肩と頭部、それと腕部が変わってる位?」

《ええ。戦闘距離は貴方の機体とほぼ同等、武装もそれ程強力なものはありません。近接時のブレードに気をつければ、勝機は十二分かと。》

「了解。」トグルスイッチを入れ、システムの大部分を立ち上げる。待機状態から、通常モードへとシステムを切替。ゲートへと歩み寄る。一歩進む毎に伝わる振動、微かに聞こえるモーターの駆動音、その全てが、感情を沸き立たせる。

《ゲート、開きます。戦闘開始のタイミングはアナウンスを確認して下さい。…健闘を祈ります。》

「…任せて。」通信終了。

ゲートから漏れる光、その先に小さく見える対戦相手の機体、ダブルウィング。
グリップを握り直し、戦闘システムを起動させる。

『システム キドウ』

無機質なCPUの音声が聞こえる。




《お待たせしました! アリーナ初参加の新人『Sis』! そしてこちらも新人レイヴン、勝率が中々振るわない『リトルベア』! 勝利の女神が微笑むのは一体どちらでしょうか! 本日の第一戦、これより開始致します!》




歓声の中、二機のACがバーニアを唸らせた。




―mission 005 [ FIN ]―
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