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mission004《シス・ブルーム-Sis=Brume-》

初めてのミッションを終えたシスにエマが勧めたのは、レイヴン同士の直接戦闘の場である『アリーナ』。

先の戦闘で彼女は、シスの強みと、それを活かすには足りない操縦技術、その両方を目の当たりにしました。


この選択はエマなりの親切心。はたしてそれが吉とでるか、凶とでるか。第四話、これよりスタートです。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






『んー…最初のミッションならこんなモノか。』

-五月十一日、13:25。-

そうひとりごちて一枚の紙を眺める金髪の女性。そこには報酬総額、機体修理費(人件費込み)、弾薬費諸々の出費、それによる最終的な振り込み金額が記されていた。

その額、7636c。




『Armored Core3-Silent Line-"藍深き霧の瞳"』


mission-004《Sis=Brume―シス・ブルーム―》




―――この辺りで、グローバル・コーテックスを通じて引き受ける依頼の報酬、金銭回りのシステムについて、大まかに説明しようかと思う。

まず報酬額は原則として、レイヴンランク、依頼の秘匿性、作戦規模に応じて額が変動する。

今回シスが受けたのは技術者一人の口封じであり、シス自身には重要な情報が渡らない事、AC一機、オペレーター一人のみで遂行される作戦であったことなどから報酬額は10000cと少額だ。


作戦領域への移動は、基本的にコーテックス直属の輸送隊、若しくは企業から直接斡旋される部隊によるものであるが、その輸送にかかる費用は報酬からは引かれない。
つまり、レイヴン自身の機体、オペレーター周り以外の諸費用は、提示された時点で既に引かれた後。勿論その中にはコーテックスによる仲介料も含まれている。

更に此処から、ミッション毎に定められた評価基準によって加減算が行われ、レイヴンの手に渡る最終的な報酬額が決定される。



よって、レイヴンが手取りから支払う必要があるのは最終的に「機体維持費(燃料費含む)」「アリーナ登録費」「オペレーター人件費」の三つに分けられる。



先ずはアリーナ。こちらは登録制となっており、初期費用は一律1000c。これはテスト結果の善し悪しに関わらず支給される金額で十分支払う事が可能である。
勿論登録せずに住宅の選択肢を広げる事に使ってもいいし、貯めておくのも個人の自由だ。

そして、登録後半年以内にマッチメイクが行われないと登録は取り消される。この場合、アリーナへの再登録時には別途費用が掛かり、前回の登録費用に上乗せすることで

・直前の戦績
・ランキング順位(最高Bランク最下位まで)

を保持したまま登録が可能。ただし順位、ランクが上がればその分値段はつり上がり、元Aランクのランカーになると、再登録にはおよそ二万程の追加料金が掛かる。



次は整備費。いかにACがパーツ交換による汎用性に長けると言っても、一定以下の損傷ではやはり修理の方が速いし安上がりだ。
しかし勿論この辺りの費用も自身で捻出しなければならないし、場合によっては部品単位の注文も必要になるため出費も少なくなく、レイヴンになったからと言って必ずしも裕福な暮らしが出来るわけではない。



最後に人件費だが、これは整備にあたる人間には修理費の時点で割り当てられるので、自身のオペレーターがその主な出費となる。

各レイヴンのサポートに就くオペレーターは、基本的にコーテックスでの業務から外れてレイヴンの補佐をする事になるため、コーテックス所属ではなく各々のレイヴン専属という形で扱われる。
そのため、レイヴンの戦果ボーナス、コーテックス指揮下の大がかりな作戦行動などでない限り、原則としてコーテックスより直接給与が出る事はない為、オペレーターの給与もレイヴンが支払う必要がある。

最初に渡される書類にもこの内容は明記されているため、契約不履行となれば当然レイヴンとしての資格は剥奪され、機体やパーツも差し押さえられる。

レイヴンとオペレーターの関係自体がそもそも希薄なもので、ミッション遂行時の補助、ミッションの引き継ぎ、企業からのメールの仲介など、事務的な補佐以外はそもそも関係を持つ事は少ない。シスとエマのように、寝食を共にすることは非常に希と言える。

…過去の事例を見ても、同様に個人としての付き合いがあったのは「レイン・マイヤーズとそのパートナー」位のものだ。

ただ、この二人に関しては、管理者の破壊と関係があるらしく、関連記録も抹消されてしまっているため、それ以上の事を調べる事は出来ない。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「シス。」

銀行を出たところを呼び止められる。そこには、用事の済んだらしい私服姿のエマが立っていた。

「あら、そっちの用事は?」

「私の方は終わりましたよ。それより、報酬の方はどうでした?」

「ん。まあこんなモンでしょ。」

差し出された明細票を受け取り、一通り目を通す。

「ふむ…」

「どうかした?」

「いえ、なんでもありません。…この金額であれば燃料の補充等に使っても十分余裕が出来るでしょうし。」

「じゃあちょっと買い物でも付き合ってくれない?」

「あっ、ちょっと!」

エマの手から紙切れをひったくり、デニムのポケットへと無造作に仕舞い込む。そのまま足取りも軽く歩き始めるシスを追うように、エマもまた歩き出す。

「全く…ところで、アリーナの方は考えて頂けましたか?」

「あ、うん。一応ね。」

「一応ですか…。あの、恩着せがましいかも知れないですけど、私なりにちゃんと考えてみたんです。貴方の試験結果についても資料を見せてもらいましたし。その上で、依頼のない間もアリーナで経験を重ねた方が生き残れる可能性は高くなるんじゃないかと…」

言いながら、どんどんと小さくなっていくエマに引け目を感じたか、態と大袈裟に振る舞うシス。
一夜明けて既に、互いの関係がおおよそ決まってきたようだ。

「ちゃ、ちゃんと参加するってば! 貴方の言いたい事も分からなくもないし、気を遣ってくれてるのも分かるからさ。あんまりそんな泣きそうな顔しないでよ。ね?」

「いや、別に泣きそうな顔なんてしてませんけど…。」

「細かいことはいいから。それに、登録しただけで参加しないっていうのも勿体ないでしょ? 結構大金払ってるわけだし。」

「それもそうですね。マッチメイクは?」

「まだ未定。相手は…コレって自分より下か一つ上しか無理なのよね?」

ポケットから取り出した端末を見ながら、エマに問いかける。

「ええ。しかし現時点で貴方より後に登録したレイヴンはいないため、事実上最下位になりますが。」

エマの言葉に眉を顰め、再び端末へと視線を落とす。

「…まあそれはそうだけどねぇ…。」






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「それで、アリーナのマッチメイクはどうします?」

新都市区の一角にある、大型のショッピングモール。コーテックス支部を出たその足で、二人はそのまま買い物へと来ていた。
ちなみにグローバルコーテックスは各区画に支部を持っており、アリーナでの試合参加、コーテックスからの召集など、特別な用事でもない限りは支部に足を運ぶ事で十分対応できるようになっているのである。

「一応端末の方から申請は送っておいたし、相手はE-9の『リトルベア』かしらね。」

「リトルベア…登録されている機体は『ダブルウィング』でしたね。確か貴方と一緒に試験を受けた方でしたっけ?」

「登録?」

「アリーナには前もって使用する機体のアセンブリを登録している方が殆どですから。」

エマが言うには、一対一、二対二以外の戦闘条件が無いアリーナでは、対ACに特化したアセンブリを構築し、その機体を変えずに戦うレイヴンが圧倒的に多いそうだ。
武器の変更こそあれ、フレームパーツまで組み替える者は早々居ないという。

「でも、フレーム固定だと相手にアセンバレちゃうんじゃないの?」

「いえ、対戦直前に再度アセンブリの申請を行うのでその辺りは余り問題にはなってないですね。」

「…ふーん、それで申請と違う武器を使ってたりした場合はどうなるの?」

顎に手を当て、小さく唸る。

「えーと…まあ、反則負けなどのペナルティは課せられるようです。対戦前の機体紹介に支障が出ますし、主に観客と運営にとって厄介といった方が良いでしょうね。」

「…それで、対戦相手の最終申告アセンは見れるの?」

「ええ。まあそもそもパーツ変更で対策を立てられるタイミングではありませんし、これ位なら良いんじゃないでしょうか。」

一応は「フェアプレー」なのか、と呟くシス。
そして、大雑把な確認が済めばそれで十分とでも言いたげな様子で、商品棚へ視線を移す。

「…。」

「何か足りないのあったっけ?」

「…食材はありますし、家財道具もある程度は揃ってますよ。適当に嗜好品でも買っていきましょうか。」

「そうねー。トランプとかゲームとか色々買ってこうかしら。あとテレビとか良いオーディオなんかも欲しいわね。」

「少しお菓子も買い足しておいてくれません? あとゲームでしたらチェスなんかもあると嬉しいのですけど…。」

「チェス出来るんだ。じゃあこっちのポータブルタイプのもあった方が良いわね。」

「こういった小型端末のタイプは少し味気ないですけどね。」

シスから受け取ったのは、小さな正方形の端末。
これにディスクを入れる事で、準備の手間無く立体映像でゲームを遊ぶ事が出来るというものだ。

「まあ、自分でコマ動かす方がノるのは確かね。」

「ですよね。というかもしかして輸送中にやるんですか?」

「長距離移動があったり作戦時間が長いと、少々の娯楽があった方が良いのよ。気疲れしちゃうしね。」

「はあ…。」

今一つ釈然としない表情のエマを尻目にディスクを見ているシス。

「ディスクはチェスにショーギにマージャンにー…何かやりたいのある? カードゲームは現物の方が良いでしょ?」

「そりゃあ…まあ。…うーん、その辺りがあれば十分じゃないですか? どれも1ゲームが長いですし。」

「それもそうね。じゃあ次行きましょ。」

そうして大型のテレビモニタやオーディオセット、ビデオゲームやカードゲームなどの嗜好品、菓子やジュース、酒類、衣服、PCなどを盛大に買い込み、帰りのモノレールへ。






本日の出費。

大型テレビモニタ:-20c

オーディオセット:-10c

二人分の衣服:-18c

嗜好品(ゲームなど):-12c

飲食品:-1c

AC燃料費:-100c

所持金:7475c

        以上









◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




-同日、18:40-

二日続けて業者の世話になり、テレビ、オーディオセット等の搬入も済んだ部屋。

「んーっ、寝かせたら寝かせたでやっぱり美味しいわねー。」

「そうですねー。」

エマが昨日残ったハヤシライスを寝かせて居たらしく、それを温めて夕飯とする流れとなっていた。
流石にそれだけでは味気ないと見たか、シス謹製シーザーサラダが添えられている。

「ふむ、このドレッシング美味しいですね。酸味がほどよくて…んー、甘さもありますし、リンゴ酢でしょうか。何処かで買ったんですか?」

「ソースも自分で作ったわよ?」

「…えっ…?」

「…いや、なんで料理できない前提で話進められてんのよ。」

エマの表情が固まる。どうやらシスに対して料理下手という印象を持っていたらしく、とてつもなく意外そうな表情と、申し訳なさそうな空気を醸し出している。

「す、すみませんてっきり…」

「料理とか、しなさそうに見えたかしら?」

「正直下手なんじゃないかと…」

「ちょっと?」

まったくもって容赦がない。流石に直接的すぎてシスも半分呆れてしまっている。

「まあそれは良いとして。一応マッチングの件返ってきたわよ。」

「! アリーナですか。」

「ええ。日時は二日後、五月十三日の午後二時、機体の申請は明日の零時締切、その後は変更不可だってさ。で、情報開示は当日十二時くらいになるみたいね。」

「アセンブリはどうするんですか?」

「どうするったって、そもそも初期支給分のパーツしかないでしょ今?」

「あ、それなんですけど…今日の朝方、昨日の依頼の特別報酬を受け取りましたよ。」

「あー…そういえばあったわね。何だったの?」

エマの持つ端末からデータが送信される。
画面に映し出されたのはAC用の武器らしい。型番はCWG-SRF-100、形状と型番を見る限りスナイパーライフルで間違いなさそうだ。

「これです。ガレージの方へ既に搬入済みとの事なので、アリーナでの戦闘までには調整も出来るでしょう。」

「ふーん、スナイパーライフル…右手用かしら。」

「そうですね。販売されているモデルのマガジン拡張型みたいですけど。」

「うーん、結局のトコ武器が一つ増えただけか。まあ試しに使ってみようかしら。」

「あ、ですがFCSの補正が合わないのでは…」

「ソフトウェアの微調整でマシにはなるでしょ。いざとなればブレードもミサイルもあるしさ。」

「…まあ、アセンブリに関してはシスに任せますよ。」






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






話している内に食事も終了。
シャワーも既に二人とも済ませてしまっているため、少々暇を持て余しているようだ。

「さて、今日も飲みますかー♪」

「またですか?!」

「ん? お酒がアレってなら別にジュースでも構わないけどね。お菓子も買い込んだワケだしさ。」

「私は普通にジュースにしておきますよ。」

「そう。んー、時間もあるし軽くゲームでもしてみる? ボードでもカードでもビデオでも、どれでも良いわよ?」

持ち帰って棚に仕舞ったゲームを漁るシス。これといって決まっている訳ではなく、とりあえずはエマの意見を待ってみるつもりらしい。

「そうですねー…それじゃあ手近なところで先ずはポーカーでもどうですか?」

「いいの? 私結構強いんだけど♪」

「さあ、どうでしょうか…足を掬われなければいいですが…♪」

「ルールはどうしよっか。ホールデムでもクローズドでもいいけど。」

「賭け事をする訳ではないですし、クロースドが無難じゃないですか?」

言いながらカードをシャッフルするエマ。何度目かのシャッフルを済ませ、シスに手渡し更にカットを行う。
賭けないと言いながらも、二人の目つきはかなり本気である。



そして数十分後。



「…ふっ♪」

「………。」

シス惨敗。ノーペア相手にフォールドしたり、ストレートフラッシュを叩き出されたりと見るも無惨な負けっ振りであった。

「…どんだけ強いのよアンタ…」

「コーテックスでも負け知らずでしたから♪ まあ、ポーカーだけですけどね。」

その後も様々な種目で対戦を挑むものの、心理戦や戦略が大きく絡むゲームで勝つ事は結局一度も出来ないシスであった。



「あ! ちょっ…待った!」

「ダメです。チェック。」

「う…。」

うなだれてキングを倒す。



「もう一回!」

「えー…流石に明日で良いんじゃないですか…?」

「いや、明日もどうせ休日だし、もうちょっと夜更かししても良いんじゃない?」

携帯端末のライトが明滅する。

「…そうも行かないみたいですよ。」

「…はぁ…。」

大きな溜息。しかし、傭兵となった以上は避けては通れない事ではある。
端末に表示されたのは、二つの依頼。

しかも提示期間は明日までときた。

「ミッションこなせって事ですか…やれやれ、めんどくさいわねー…」

「仕方ないですよ。それで、どちらを受けます?」

「明日考えるわ。実行期間によってはどっちも受けられるでしょ?」

「まあ、アリーナと被らなければ私はどちらでも良いんですけどね。」

二つの依頼、そして初挑戦のアリーナ。

「…頼りにしても良いのかしら。」

「そうして貰えると有り難いですね。」




本格的な傭兵としての活動、その助走が始まる。




―mission 004 [ FIN ]―
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