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mission003《傭兵-Mercenary-》

レイヴン試験をパスし、早々に住まいを移すシスは、ちょっとした縁により、彼女の担当補佐官となるエマと同居することに。

そして、荷物の整理を済ませた彼女らの元に、レイヴンとなって初めての依頼が舞い込む。

二人にとって、互いの試金石でもあるミッションが始まる。

第三話、これよりスタートです。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






爆音。小型のガードメカが火を噴いて崩れ落ちる。ブレードを振る腕を抑えることなくそのまま旋回し、『B』と記された扉に近付く。

《熱源の消滅を確認、Bブロックへのゲートロックを解除します。》

「了解! そっちにMTの反応は?」

《小型の熱源が4、中型の金属反応が6、恐らくガードメカのみでしょう。》

眼前のゲートロックが解除され、ランプが赤から白へと変化した。




『Armored Core3-Silent Line-"藍深き霧の瞳"』


mission-003《Mercenary―傭兵―》




コンソールを手早く操作し、そのまま扉を開いて機体を滑り込ませる。

「中型の方は?」

《ブリーフィングにあった通り、使用済みのコンテナと見て間違いありません。》

「なら意識する必要はないのね。」

《ええ。目標の技術者は恐らくCブロックです。残りのゲートは塞いでありますから、他のエリアへの逃走は不可能でしょうし。》

「手間が省けて助かるわ…っと!」

通路をブーストで駆け抜け、もう一つの扉を越え一気に斬りかかる。
単純なプログラムで動くガードメカでは、側面からの急接近に対応する術もない。

「次…ちっ!」

《…!》

この動きだ。回避が間に合わないことを知ってか知らずか、姿勢を細かく変えて致命的な被弾を避けている。
実際、機体内部の損傷度合いを示すAP(アーマーポイント)はほとんど減少していない。



(…ですが、回避できるであろうタイミングの攻撃をかわせないのは問題ですかね。)

《エマ! このブロックも片付けたわ!》

「あ、はい! Cブロックへのゲートロックを解除。熱源は6、ガードメカ5、MT1です、恐らく目標はそちらに。」

《りょーかい。さっさとケリつけて帰りますか。》





『れ、レイヴンか!?』

「正解。…ちょっと遠いか」

呟きと同時に、フロア最奥部で逃げ場を無くしていた逆関節型MTへ、機体を向けセーフティを外す。

『ぐあっ…!!?』

「っ…!?」

一瞬のブラックアウト。『オーバードブースト』がこれ程のものとは。
制御を離れた状態でMTと衝突し、シスの乗るACもそのまま壁へ飛び込んだ。

《だっ、大丈夫ですか!? ガードメカもまだ生きてます、直ぐに回避を!》

「っつつ…」

危うく気を失うところであったが、なんとか意識を保てたようだ。
直ぐに機体を起こし、コンテナの陰に退避する。技術者の方はまだ動けないのか、MTは抵抗する素振りを見せない。

「…悪いわね。」

三発、四発、五発とライフルを撃ち込むと、遅れてMTが煙を上げる。
そして反転。残ったガードメカへ銃口を向けた。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






《敵勢力の全滅、施設の制圧を確認。お疲れさまでした。》

『 モクヒョウ タッセイ 』

「ミッション終了、と。それじゃあ、場所は回収ポイントAでお願いね。」

《ええ、此処からだと21:18頃の到着になりますので、それまでに回収ポイントまでお願いします。》

「了解了解。」

倒れているMTにだめ押しの攻撃を加え、目標達成を確実なものとする。コックピットハッチは最初の衝突でひしゃげており、脱出できるスペースはない。
その上、銃撃によって炎を上げているこの状況では、まず生きてはいないだろう。

「…はぁ。」

小さくため息をつき、MTを眺める。先程は気付かなかったが、ハッチの隙間から血が流れ出ている。

「仕事とはいえ、気分の良いものではないわね…。」

機体を通常モードへ切り換え、施設を離れる。

施設被害もごく軽微、作戦時間も短かったことから依頼人の評価も高く、後日追加報酬も用意される運びとなった。





「しかし、この規模の依頼であれば、もう少し余裕を持っても良かったかもしれませんね。」

「…ぷはっ。そうねー…態勢を整える前にやれればよかったわけだから、晩御飯とか済ませて夜中に仕掛けてもよかったか。」

期間途中の輸送機、スポーツ飲料を片手に話す二人。
耐Gスーツを初めとした機構が備わっているとはいえ、つい先程まで乗っていたのは人型の機動兵器だ。
シスは額に汗を滲ませ、既に疲れの色を見せていた。

「…大丈夫ですか?」

「…なんとか。帰ったら先シャワー浴びていい?」

一瞬、驚いた顔を見せたが。

「どうぞ。その間に私が夕食を用意しておきますよ。」

「ありがと。」

返事は、その笑みと同様に穏やかなものだった。






【Result】

成功報酬:10000c

弾薬費:-1200c

機体修理費:-1164c

合計金額:7636c

        以上









◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






-五月十日、22:45-

反響する水音。シャワーから吐き出される湯が床のタイルを叩く。
髪が結構伸びている分、躰に張り付いて少しむず痒い。

「…ふー…」

エマは夕食の用意でもしてくれているのだろうか。
あれ程大きく揺られたというのに空腹を感じる辺り、我ながら丈夫な体だと思う。
しかし、最近髪はともかくとして。

「…太った?」

二の腕、脇腹、太ももとまさぐってみる。
少し前と比べてもそんなに贅肉が付いたようには見えない。むしろ余分な脂肪はそれなりに落としているし、締まるところはしっかりと引き締まっている。
多少厳しめに見ても、十分『ナイスバディ』と呼べる程度のプロポーションだろう。

「それとも胸か? …確かにブラはちょっとキツくなってきてるし、採寸してみた方がいいかしら…。」

呟きながら、その豊満なバストを両手で抱え上げる。しかし重い。

「んー…やっぱり長いと洗うのちょっと手間ねー…エマはどうしてるんだろ。」




「っくしゅん!」

小さなくしゃみ。鼻を啜り、再度手を洗い直してそそくさと調理に戻るエマ。

「風邪でしょうか?」




「はーっ、キモチよかったぁー! やっぱ汗かいた後の風呂は最高ね!」

「あら。思ったより早かったんですね。」

火に掛けた鍋を見ながら返すエマ。適当に返事をし、エマの傍らにある冷蔵庫へと足を運ぶ。

「うん、先シャワー借りたわ。…んー、帰りにショップに寄ってきたのは良いものの、まだあんまり冷えてないわね。」

「一緒に砕氷も買いましたし、それを使えばいいのでは…」

沈黙。何か言いかけていたみたいだが、その先が一向に聞こえてこない。
不思議に思い振り返ると、そこには、口をあんぐりと開けて固まっているエマの姿があった。

「…? どうかした?」

「…しっ…シスっ!!? なんなんですかその格好!?」

「え?」

言われて自分の姿を見る。室内という事も手伝って、ついつい薄着で脱衣所から出てきたのだった。もともと着るつもりだった寝間着はリビングのソファに掛けてある。

「あー、いや、思ったより部屋暖かかったからつい、ね?」

「暖かかったとかそういう問題じゃないでしょう! いくら何でもショーツ一枚って…馬鹿じゃないですか!?」

ショーツ一枚。言葉通りである。首からタオルをぶら下げ、髪を結い上げているのだが、トップスは何も着ていない。
流石にショーツは着用しているようだが、これは安堵すべきなのか? などと妙な方向へエマの思考は転がっていきそうになる。
少し頭痛もするが、これは精神的なものだろう。多分。恐らく。

「…馬鹿って流石に酷くない?」

「でなければ露出狂じゃないですか…女同士とはいえ、流石にそういう格好はやめてください…。」

「ふーむ…仕方ないわね。じゃあさ、シャツだけでも良い? 流石に着込むと暑いわよ、今日。」

「…わかりました。」

言うが早いか、手早く掛けてあったシャツを手に取り、袖を通す。
七分丈のTシャツのようだが着丈が結構あるらしく、膝上まで裾が来ている。
…こういうのが男心をくすぐるのだろうか?

「んー? おねーさんの色気にドキッとしちゃった?」

「いいえ。…あの、すみません。鍋の方、見ておいて頂けます? 私もシャワーを浴びたいので。」

「ん、おっけー。ゆっくり入ってていいわよ。」

「あまり待たせるのもなんですし、それなりに早く戻りますね。」

「りょーかい。お、ハヤシライスかしら。」

脱衣所に向かうエマを見送り、鍋の方に視線を移す。
ぐつぐつと音を立てる鍋からは、美味しそうな匂いが漂っている。

「しかし、まだ食べるなってのも生殺しよねぇ。…あーお腹空いた。」

ミネラルウォーターを注いだグラス片手に、食欲をそそる匂いと格闘するシスなのであった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「…はぁ。」

全く、いくら何でも警戒心という物が欠如しすぎではないのか。いくらパートナーで、同性だとはいえ、武器すら隠せそうもない格好を平然と晒すなんて。
そりゃあ、こちらから『パートナー』と名乗った以上、一定の信用を置いてくれるというのは、正直言って嬉しい。
だが、だからといってああも易々と隙を見せられては、こちらとしても戸惑ってしまう。

「何だか、初日から随分と振り回されてしまってる気がしますね…。」

シスほどとはいかないが、慣れない状況でのサポートだったこともあって、少し肌に汗が滲んでいた。
額に張り付いた前髪を払い、湯船に体を預ける。
彼女には負けるが、エマ自身もスタイルは決して悪くない。ウェストはちゃんとくびれているし、ヒップラインだって綺麗なものだ。

「…。」

複雑な表情で、ただ一点を見つめる。

「…はぁ。」

二度目の溜息。本人の名誉のために言っておくが、決して貧乳ではない。

「こんな調子で大丈夫なんでしょうか…。」




「すみません、少し長湯が過ぎましたね。」

着替えを済ませ、洗濯機を起動して脱衣所を出る。キッチンの方には依然として悩ましげな視線を鍋に向けるシスの姿が。

「へーきへーき。疲れは取れたかしら?」

「ええ、おかげさまで。そろそろ出来たみたいですし、食べましょうか。」

「そうね!」

「…。」

どれだけ腹を空かせていたんだろうか。

「…先に食べて頂いてもよかったんですが…。」

「いやまあ、それは流石に悪いかなーってさ。」

「……。」


やはり、調子が掴めない人だ。小さく溜息を吐いて、食事の用意に移るエマであった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「御馳走様ー。美味しかったわ。」

「お粗末様でした。」

程よく腹も膨れたところで、片付けに入る。食器類は基本的に軽く水洗いをして洗浄機にかけるのみ、便利なものである。その横ではシスが砕氷の袋やグラス、缶入りのサワーなどを抱えてリビングに戻るところだった。

「エマ、おつまみとかいる?」

「えーと、チーズクラッカーを確か買ってたはずですけど…。」

「おっ、良いわね。それにしましょ♪」

夕食の時以上に張り切って用意を済ませていくシス。
ちなみに現時刻は五月十一日、00:12。すっかり夜も更けてしまっている。

「ところで、明日の予定は決まってますか? 私は今回のミッションレポートを提出すれば、その後特に予定は無いのですが…」

「ん? んー…今の所は依頼もないし、とりあえず報酬の確認位しかないわね。」

「でしたら、アリーナに参加してみてはどうでしょうか? ミッションをこなすより安全に報酬を得られますし、弾薬費や機体の修理費はコーテックスがもちますよ。」



グローバル・コーテックスでは、レイヴン同士による一対一、若しくは二対二のアリーナを不定期に開催しており、そこでの戦績もレイヴンランクの評価基準として加算される。
勿論ミッションのみ、アリーナのみで稼ぐ事も可能だし、両方で戦績を残さないとランクが上がらないという事もない。

そして試合は、コーテックスが指定した地区から一つを選んで行われ、その模様はライブ中継などを通して一般人にも配信される。

他では考えられない程スリリングな娯楽であり、ギャンブルである。
見せ物となる代償として、試合を行うレイヴンの弾薬費、修理費などは観戦料や賭け金から支払われ、勝利者にはランクに応じた賞金が与えられる。



「見せ物かー…あんまり気乗りしないわねー…」

「まあ、それはそうかも知れませんが、少なくとも早い内に対AC戦に慣れておいた方が生き残れる確率は高くなりますし、それに、ランクアップ報酬は賞金だけでなくてAC用のパーツなどもありますよ?」

「…んー、明日でも良いかしら? なるべく早く決めるようにはするからさ。」

「そう、ですね。もう時間も時間ですし。」

壁に掛けられた時計に視線を移す。針は既に一時を指そうとしていた。

「少し、長話が過ぎてしまいましたね。」

「そう? 腹を割って、とまでは行かなかったけど、話せて良かったわよ?」

「そこは同感ですけどね。」




シスがレイヴンとなって、初めての夜がようやく終わった。




―mission 003 [ FIN ]―
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