スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/--(--)
スポンサー広告

Act.001 『Running Out』

吐き捨てるような言葉を残し意識を失うノーティスと、結果として彼女に守られた二人。
意識を持たない二人を連れ、シスター姿の少女が逃げる先は、希望か、絶望か。

そして、遅れて現場に現れたカイは、その瞳に何を見たのか。



猟奇殺人から一転、物語は動き出す。




第一話、開幕です。
『ははっ。…“相変わらず。甘くて正しい事ばっかり言うんですね、貴方は。”』

 その言葉を残して崩れ落ちた少女、そして、すぐ側。
自らがあの“牢獄”から連れ出した少女を背負い、歩き出す。足取りは重い。だが、止まってはいられない。



―ここから、一刻も早く。できるだけ遠くへ離れなければならない。あのような状態で更に人が集まろうものなら、確実に自分達は捕まるし、なによりこの血に塗れた少女を見捨てる事になる。

 結果はどうあれ、彼女が居なければ。間違いなく二人とも、あの男達に捕らえられていただろうし、その後の事など…想像したくもない。慌てて先程の忌まわしい記憶を頭から追い出す。



『アラま、そんな重そうなモノ抱えちゃって、どうしたってのお嬢ちゃん。』

「っ!!?」

「のわった!?」

 不意に頭上から掛かる声に、心臓が跳ね上がる。
そして。つい数十分前の出来事が脳裏に浮かび、表情が強張っているのが自分でも分かる。

半ば恐怖に彩られた瞳が睨め上げる先に映る顔。それは見知った男の、怪訝そうな表情であった。

「んな怖いカオしなくても…ってオイオイ、ブリジットじゃねーの! マジでどーしたのよソレ?」

「あ、アクセルさん…!」

―アクセル・ロウ。この時代より一、二世紀程前の過去から来たというタイムスリッパー。

 自分よりも20cm以上は背丈が有るであろうその男の、普段と変わらず気の抜けた表情に安堵するが、すぐに気を持ち直す。
それなりに話のできる知人に出会った事は幸運だが、だからといってすぐにこの状況が変わる訳ではないのだ。

最優先事項はこの現場を離れ、身を隠せる場所を見つける事。

「って…その血…!? …あァ、そーゆーコトね。」ブリジットの肩に担がれた緑髪の少女、そしてその向こうの広場を見比べ、嘆息を漏らす。「何かあった」程度は察したようだ。

「…良かったら手伝うぜ。」

「あ…ありがとうございます…。でも、何処に逃げたらいいのか…。」

「…とりあえずココから離れなきゃなぁ。さ、行こうぜ。そっちの荷物と一人はこのアクセル様に任せとけ。」

そうして、街の中央から離れる。二人の少女をそれぞれの背に負い。



―――Guilty Gear XX ~GOLDEN EYES~


Act.001 『Running Out』



「悪いねー、おばちゃん。料金は弾むから、他言無用って事で宿貸してくんないかな? あとシャワーとか借りれると助かるのよ。」

「…ワケあり?」

「…まあ、こう見えて賞金稼ぎやってんのね、俺。それで匿わなきゃなんねーコが居てサ。」

「なるほど、後ろの三人かい。…随分と血に塗れちゃってるねぇ。……それで、いくらだい?」

「んー、こんな所でどうよ。」

 手に持っていた鞄から紙幣を数枚ほど取り出し、示す。

「…商談成立。二階奥の部屋使いなよ、階段は二カ所あるし逃げるのにも困らないんじゃないかい?」

 アクセルの手から紙幣を取り、右手の階段を指差す宿屋の女性。

「サンキュー。いい女じゃないの、おばちゃん!」

「年齢を重ねた女の魅力ってもんさね。シャワーも部屋についてるから使って構わないよ。」

「あ、ありがとうございます。」

 ノーティスを背負ったままぺこりとお辞儀をするブリジット。

「何があったかは聞かないけど、ちゃんと立ち直らなきゃ駄目だよ。その様子じゃ血なまぐさいモノも見ちゃったんだろう?」

「…は、はい。」

 二度目のお辞儀、そしてアクセルを追って階段の上へ消える二人であった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「それで、事件の概要は?」

「どうやら、賞金稼ぎらしき少女と、賞金首の集団との争いがあったようです。目撃情報を総合すると、二人の少女が賞金首の集団から逃走中に捕まり、それを助けた賞金稼ぎと名乗る少女が突如豹変。その後は…先程見ていただいたとおりです。」

「なるほど…。」

「…その時広場にも何名かいたようなのですが、妙な事が。」

「妙な事、ですか?」

 ファイルをめくる男の顔が怪訝そうに歪む。
何故そうなったのか、原因の分からない怪我人が一人出たという。

「事件発生の際、現場にいた民間人の一人が小さな金属の塊に右肩部を穿たれ重傷、医療施設へと運ばれたようです。他に民間人の怪我人はいないとの事です。」

「小さな金属の塊?! …まさか…!」カイには心当たりがあった。過去に一度と言わず相対しているのだから。



―ブラック・テック。今となっては失われた科学技術の結晶とも言える兵器である。
それは法力を使えない者でも扱え、いとも簡単に人を殺める事さえ出来る悪魔の技術の結晶。



「どうしました?」

「いえ、何でもありません。ですが…? …あれは?」

「はあ、支部長ですか。あの方自身のたっての希望もありまして。その…この事件の指揮を執りたいと。」

「…きな臭いですね…判りました。それで目撃者は?」

「直接現場を見た方は既に皆、医療施設の方へ。精神的ショックが大きいようですし、正確な情報を聞き出す事は難しいかと。」

「他には。」

「彼処の喫茶店の店員が事件前、加害者と思われる少女を見たと。」

「そうですか。ありがとうございます。…それともう一つ。」

 カイの声が突如小さくなる。

「…何でしょうか。」

「今回の事件、恐らく単なる猟奇殺人ではないでしょう。後々大きな動きがあるはず…その為に一人、こちらへ呼んでもらいたい人がいます。警察機構の人間ですが、仕事ではなく私用だと。それから…」

 ポケットからメモ用紙を取り出し、万年筆で文字を書き並べる。それを封筒に入れ、目の前の男に渡した。

「これは…?」

「彼女に渡してください。そして、こちらに来る準備をする前に読むようにと。」

「…判りました。ですが何故…」

「…貴方も、聖戦の経験はあるでしょう。」

「ギア、ですか。」

「恐らく。ただ、それだけとは思えないので。…保険のようなものです。」

 険しい表情で空を仰ぐ。
既に人間型のギアは殆どが機能を停止しているはずだし、兵器としての側面が強く、人に危害を与える者もある程度は鎮圧したはずだ。

それに、先程部下が指差した喫茶店。あの店は…。

(ノーティス…。貴女がこれを…?)


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「そうか。世話になったな。」

「いえ…ですが、その女の子がどうかしたんですか? 確かに妙な荷物を持ってましたし、あの後、彼女が賞金首に向かっていって…その、賞金首を殺してしまったんじゃないか、とは…聞いていますけど。」

 喫茶店のレジ前で店員と話す一人の男。赤く染まった上着にヘッドギア、後頭部から垂れ下がる付け毛。
その左手には、粗雑に布を巻き付けられた鉄塊が握られている。

「知る必要はねえよ。」

「…ですが」

「失せろ…死にたくないなら関わるんじゃねえ。」

「っ…?!」

 ひと睨みで竦み上がる。面倒事を避ける為に普段からやっている事だ。
相手がそれで自身を恐れようとも、別段どうと言う事はない。

「チッ…厄介な事になりそうだな…」

―この男、ソル・バッドガイ。神器、封炎剣を持つ凄腕の賞金稼ぎである。ギアを狩る事を第一義として行動しており、戦闘能力に関しても相当の実力を持つ。

『…ソル?! 何故お前がここに?!』

「チッ…メンドクセエ…」

 歩調を早めソルに向けて詰め寄るカイ。

「何故ここにいると聞いているんだ。」

「…テメエには関係ねえ。」

「関係無い訳がないだろう! 表の殺人事件は我々警察機構の管轄だ。…犯人と思われる少女の捜査も。」

 カイの言葉に眉を顰める。やはり、此処にいた目的は自身と似たような物であったようだ。

「…恐らく、アレをやったのはノーティスでしょうね。」

「だろうな。…で?」

「お前は、どうするつもりだ?」

「どうもこうもねえ。…必要があるなら潰す。それだけだ。」

「ッ…。」

 ソルの言葉に苦い表情を浮かべたカイはそのまま踵を返し、店の外へ向かう。

「…ブラックテックが絡んでいる可能性もある。気をつけるんだな。」

「…テメエがな。」

「何が隠れてやがる…」舌打ちを鳴らし、カイに遅れて店を後にする。

 『DEAD OR ALIVE』の賞金首に追われていた少女と、自身のよく知るギアの少女。そして、ブラック・テック。
大きなうねりの始まりを、何処かで感じていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「…それで、そこのお嬢ちゃんに助けられた、と。」

「…ハイ。」

 宿屋の一室、未だに目を覚まさない少女二人と、ベッドに腰掛けて話すブリジットとアクセル。
不安げな表情のブリジットと比べ、アクセルは未だ半信半疑と言った様子。

「その豹変っつーのがイマイチわかんねーな…あと、何だっけ。黒い塊?…心当たりも無くはねーんだけどさァ…」

「…心当たり、ですか?」

「ブラック・テックっつーんだけどな。20世紀には腐るほどあったんだが、どうも今の時代じゃ失われた技術らしいのよ。」

「ブラック…テック…? それで、その、ブラック・テックを見てから…彼女の様子がおかしくなって。」

 ブリジットの言葉を聞いて、更に考え込む。

「へぇ…なんか恨みでもあるのかね、アレに。」

『…う…んー…』

 二人の背後で体を起こす気配。どうやら、気を失っていた少女が目を覚ましたらしい。どちらかは分からないが。

「アレ…私…たしか。」

「…目、覚めたんですね。」

「キミ…さっきの。そっちは?」

 アクセルの方を睨み付ける金色の瞳。彼女の瞳には、露骨な警戒心が見える。

「はぁ…落ち着けって。俺はコイツの知り合いだからサ。少なくとも、アンタに危害は加えねーよ。」

「…そう。」

「あの。ウチ、ブリジットって言います。さっきは助けてくれて…ありがとうございました。」

 冷めた表情を浮かべたまま、下げられた頭を見つめる。

「大したことはしてないし、礼を言われるような事でもないよ。…アイツ等が気に食わなかっただけ。」

「ですけど、アナタのおかげで助かった事は事実です。ウチも、その人も。」

 そう言って、未だベッドに眠る少女を見遣る。
なおも冷めた表情を崩さないノーティスに、アクセルは問いかけた。

「アンタの名前もまだ聞いてねーな。俺はアクセル・ロウ。アクセルって呼んでくれればいい。アンタは?」

「…ノーティス。ノーティス・アーシュヴァイン。好きに呼んでくれて構わない。」

「でさ、ノーティスちゃん。ちょっと聞きたい事があんだけどイイかな?」

 面倒臭そうに「どうぞ」と頷く姿に、何となく既視感を覚えながらも、問いかけを続ける。

その言葉には、普段の飄々とした声色はなく。ただ冷静に、必要な情報を求めんとしていた。


『…ブラック・テック、って知ってるか?』


 そして。ノーティスの目の色が変わった。



「…アンタ、なんで知ってんの?」

「お、オイオイ素手じゃどうにもなんねーっしょ?! ちょいと落ち着きなって!」

「試してみる?」

「だぁからちょっと待っ…!」

 風切り音と、金属同士がぶつかり合う音が立て続けに響く。

硬く強張ったアクセルの頬には三本の赤い筋、そしてその瞳は、眼前で瞳を見開くノーティスと、その首筋に峰を突きつけた鎖鎌へと向けられていた。

「…落ち着けっつってんだろ。俺はアンタの敵じゃねえよ。」

「…そう。ならいいけど。悪かったわね。」

「…あなたは、やっぱり…?」

「ええ。人間じゃないの。それで? なんでそこの優男がアレを知ってるのか、教えてくれない?」

 一瞬で伸ばした爪を再び引っ込めて話すノーティスを見遣り、不機嫌そうに舌を鳴らす。
別に素性を知る訳ではないが、自身が人間で無い事が色々な誤解や行き違い、差別を生み、それ故の傷を負っている可能性は十分にありうる。

かといって、目の前の少女の態度の一切を気にしない、と言うには、彼女に向けられた殺意が強すぎた。

「はあ…。…実は俺、タイムトラベラー体質ってヤツでね、ブラックテックが山程あった時代の人間なのよ。」

「タイム…トラベラー…?」

「そ。特定の条件を満たすと別の時代に飛ばされちゃうわけ。…さて、次はこっちが聞く番だ。あの場所で何があった? アンタの目的は?」

「…今の所は、特に。とりあえずは、そのリストの持ち主をシメる位じゃない?」

「あと、あの場所で何があったか。だっけ?」冷たい視線がアクセルに向けられる。
そしてその口から、ただ淡々と、彼女の所業が語られる。

 賞金首に追われていた二人を何となく助けに入った事。

 そして賞金首がブラックテックを持っていた事、少女等を狙っていた理由が恐らく、GEAR研究の為のモルモットであろうと言う事。

さらに『それ以外』の理由から。正義感よりも殺意を優先した事。

「…。」

「わかったでしょ? 別に正義の味方気取りでもなんでもないし、アイツ等も気に入らなかったから殺しただけ。甘っちょろい正義感押しつけないで。」

「ノーティスさん…貴方っ…!」

「あーもーやめやめ! 今は当面の行動、考えようぜ。…そのGEAR研究やってる連中をどうにかすんだろ?」

 テーブルの上にノーティスが持っていたファイルを広げるアクセル。

「…何? 手伝ってくれるとでも言う訳?」

「乗り掛かった船ってね。…ただ一応言っとくが、アンタのやり方を肯定する訳じゃ」

「それは重々承知してる。手は多い方が助かるのも確かだし、拒否はしないわ。」

「アクセルさん…」

『んっ………誰…?』

「?」

 三人に問いかける少女の声。振り返った先にいたのは、寝間着姿の14~16頃だろうかという少女。
その瞳には、殆ど面識のない人間しか居ないという恐怖心と、自身を助けてくれた少女の姿を認めた事による安堵とが入り交じっていた。

「良かった…目が覚めたんですね。こちらのお二人はウチのお友達です。怖がらないで下さい。」

「あ、あの…ありがとう、ございました。助けて頂いて…」

「いえ、気にしないで下さい。…そう言えば、自己紹介がまだでしたね。ウチはブリジット。貴方は?」

「クリス・メタリカ、です。」銀髪の少女はそう名乗った。

「ノーティス・アーシュヴァイン。」

「アクセル・ロウだ。よろしくな、お嬢ちゃん。」

「は、はい…よろし…っ?!!」言いかけた少女の表情が恐怖に歪む。当然だろう。

 彼女が視線を向けた先にいた黄金色の瞳の少女は、先の惨劇によって血に塗れていたのだから。

「…悪かったわね。こんな格好で。シャワー浴びていい? このまま血塗れなのもイヤでしょ?」

「え、ええ。」

「行ってきな。」

 アクセルの言葉が終わらない内にベッドの前を横切りシャワールームへと向かうノーティス。

「あ、あの…ごめんなさ」

「謝らないで。」クリスと名乗った少女の言葉を遮るように、その一言だけを投げ掛けて早足で立ち去る。

彼女が去った後の部屋には重苦しい空気が漂っていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


『カイ隊長。』

「どうしました?」資料を広げ何かしらのメモを取っているらしいカイ。
彼の居る部屋に部下の一人が書類を携えて入ってくる。

「目撃情報です。人を二人背負ったシスター姿の少女と、一人の男が話していたところを目撃した人物が居るそうです。背負われていた人物の片方には、血液の染みらしきものも見えたと。」

「…そうですか、場所は。」

「現場から500メートル程南の宿場街近辺です。目撃情報を総合したところ、何処かの宿場へ入った可能性が高いと思われます。」

「分かりました。私が行きましょう。それで、彼女への連絡は?」騎士団の頃から着ていた制服、その上着を羽織り、部屋の片隅に仕舞っていた神器『封雷剣』を手に取る。

「滞りなく。幸い近隣に居るようなので、本日中にはこちらへ来られるとの事です。…ですが、支部長直々に捜査に参加されていたり、此度の勅命といい、何があるというのです?」

「今は…分かりません。」言葉を濁す。

「…ですが、少なくともただの狂気じみた事件ではない事は確かです。貴方も、周囲の動向を含めて注意していて下さい。」

「はっ。」

「私が居ない間の指揮は貴方に任せます。私はその宿場街へと向かいますので、後はお願いします。」

「了解しました、お気を付けて。」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「はてさて。カイ隊長に呼ばれて来てみたモノの。」


 未だ騒ぎが収まりきらぬ広場。地面に残る血痕を眺め、小さく溜息を吐く。
その手には、鞘に収まった一振りの剣。


そして、風になびく黒髪と茶色の瞳が空を仰ぐ。


「…とんでもない事になってるみたいね…。」


―File No.001 -Running Out- end.

―Continued to File No.002 -Stray-
スポンサーサイト















管理者にだけ表示を許可する


| ホーム |
Page Top↑
▲ Page Top
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。