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mission002 《エマ・シアーズ-Emma=Sears-》

さてさて、予想外の事態に憤慨するシスと、彼女の大声を聞きつけ足を早めるエマ・シアーズ。

優秀ながらも経験の浅いオペレーター、そして、彼女の初めてのパートナーとなる歪な新人レイヴン。



この二人の出逢いが、どのような変化を生むのか。

『藍深き霧の瞳』第二話、追記よりスタートです。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






『?…何かトラブルでしょうか…?』

進行方向左手の区画から聞こえた大声に反応し、エマは歩を進める。
あのフロアは、ガレージのレンタルや購入、住居の紹介等を受け持つ関係者向け不動産だったか。
となると先程の大声もレイヴンないし、それに近しい人物だろう。
昨日今日だけでも、三名ほど試験をクリアしている訳だし、全員が引越しを行う必要がない、という事も流石にないだろうし。

(先程聞こえたのは女性の声でしたが、まさか…?)

扉の前で小さく息を吸い込み、スライド式のそれを開けて足を踏み入れた。




『Armored Core3-Silent Line-"藍深き霧の瞳"』


mission-002《Emma=Sears―エマ・シアーズ―》




『あの、そんなに大声を出してどうしたんですか?』

「?」

入り口の方から聞こえる声。二人が視線を向けるとそこには、黒髪の女性が訝しげな表情を浮かべて立っていた。

『おはようございます、エマさん。いえ、特に大きな問題というわけではありませんが…』

(エマ…?)何処かで聞いたような…。つい最近知った名前の筈だが、どうにも思い出せない。
目の前の局員が知っているという事は、恐らく彼女もコーテックスの関係者だろう。

「ああ、外まで聞こえてたのかしら。ゴメンね、揉め事って訳じゃないから気にしないで。」

「…はあ…?」

顔を見ても、やはり知り合いというわけでも無さそうだ。しかし、相手の反応が少し妙だ。知り合いではないのは間違いないだろうが、相も変わらず彼女の表情が硬い。特に疑われるような事はしていない筈なのだが。

しかし、だからといって疑いの目をずっと向けられるのは、やはり気分の良いものではない。

「あの…私の顔に何かついてる?」

「あ…いえ、すみません、つい。」

―つい? つい、なんだ? そして今度は、何かを考え込むような仕草。私何かしたっけ?

「あの…」

「なに?」

「…シス・ブルーム、さん…ですよね?」

「っ?!」

どきりとした。なぜ、初対面の人間が私の『名前』を知ってる? 名字は流石に偽名だが、それでもフルネームを知っているのは関係者以外殆ど居ないはず。そもそもコーテックスではレイヴンを『登録名』で呼ぶ事になっているのだから。

シスの疑問は程なくして、彼女自身の口から語られる事になった。

「私は『エマ・シアーズ』。…貴方のパートナーです、レイヴン。」

「! …そういう事、か。」

「先程はすみません。不審に思われても仕方ありませんでしたね。」

「…まあいいわ。名前を聞いて思い出せなかったこっちにも責任はあるし。」

警戒も解け、口元に小さく笑みを浮かべる二人。

「お互い様ですかね。」

「そういう事。それじゃあよろしくね、エマ。」

「こちらこそ、シス。」






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「ところで、どうしてあんな大声を?」

「あ、えーと…」

「よろしければ、私の方からご説明致しましょうか?」

窓口一つを塞いで話している女性三人。元々暇な時とそうでない時の差が激しい事もあり、局員の彼女としても此処で帰して残り一人二人を待つのも勘弁願いたいところであった。

「ええ、お願いします。」

かくかくしかじか。一連の流れが説明される。シスとしては耳が痛くて仕方がなかったが、かといってこのまま帰るよりは、何か代案でも出てきてくれた方が幾らかはマシなのだ。

「…という訳なんですよ。」

つまり、大人しく黙っているしかないという事。案の定、事態を把握したエマの視線は痛い。『それなりの年齢だろうに何をしてるのかこの人は』とでも言いたげな表情だ。

「…そんな理由であんな大声を上げていたんですか…。」

「仕方ないでしょ? 実際不測の事態だったんだから。」

「ですが、コーテックスから支給された口座の方はどうしたんですか? 貴方の試験結果であれば、住居の移動やガレージ併設の部屋でも購入可能なボーナスは支給されていたはずですが…。」

「え? …。」

慌てて鞄の中身を漁る姿を、白い目で見ている二人。



―レイヴン試験を合格する事によるボーナスは三つある。

一つは標準機体の支給。必要最低限の性能のパーツはレイヴンとなった時点で十全の整備が行われた状態でガレージへと支給される。

二つ目は、機体支給に伴うスタッフの配備。これはグローバルコーテックス傘下のスタッフが派遣されるので、整備にも信頼が置ける。但し、基本的には少人数のチームが派遣される事になるので、レイヴン自身にもACを取り扱うための知識が必要とされる。
高ランクになればミッションやアリーナでの支給額も増すため、チーム増員も可能。

そして、三つ目がエマの語る『ボーナス』。機体の損傷率や敵機の撃墜数に応じて、試験終了時に専用口座、カードと共に一定の金額が支給される。シスの場合、機体損傷は表面装甲のみに留まっており、見た目ほど損傷率が高くなかった事が功を奏した。



「あったぁぁっ!!」

「それでは確認の方に移らせて頂きますね。」

「ええ、お願い。」

カードを受け取り、端末を操作する局員。それを見遣り、再びシスへと視線を戻す。

「…全く、試験終了時に説明は受けなかったんですか?」

「いやー…そもそもその辺りのボーナス無くても平気だったからつい忘れててねぇ…。」

「不祥事でスッカラカンになってれば一緒じゃないですか。」

「…耳が痛いわまったく。」

『お待たせしました。』

二人が話している内に確認が済んだらしい。局員からカードを返して貰い、それを懐に仕舞い込む。
エマの話していた通り、カードには結構な金額が入っており、それなりに値段の張る部屋の契約も可能だとか。

「ふーん…どうするかな。」

「こちらの物件なんて如何でしょう? コーテックスは近く、高速ネットワーク、ガレージ、テストスペースも完備ですよ。お値段も十分許容範囲内だと思いますし。」

「でもちょっと広すぎじゃない? 一人で住むならもう少し部屋数は少なくても良いんだけど…あ、そっか。」

「?」

「ねえ、エマ。私物って結構持ってる方?」

「…いえ。それがどうか…」

―彼女も気付いたらしい。一人で余るなら二人で住めばいいのだ。…勿論相手にもよるのだが、彼女となら大丈夫だろう。

「じゃあさ、一緒にどう? 此処。」

カタログの写真を指差し、問いかけた。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






『…はい?』

「だからさ、この部屋。エマも一緒に住まない?」

「いえ、いきなり言われてもこちらにも都合というか準備と言うものもありますし…」

この反応も無理もないだろう。困惑した表情を見せるエマを、意地悪げに見ているシス。
先程の復讐とでもいった所だろうか。
しかし忘れてはいけないが、先程の恥は紛う事なき彼女自身の失敗であり、エマには特に責任がない。

「…まあ、冗談ってワケでもなくてね、オペレーターになる人間の事はある程度把握しておきたいのよ。」

「ですが…」

「レイヴン個人の補佐担当、やった事無いでしょ?」

「っ!!?」

完全に予想外だった。特にそういった会話はしていないはずなのに。

「驚かせちゃったかしら?」

「どうして、分かったんですか?」

「全部が全部ってワケじゃないけど、個人担当の補佐やった事ある人間がレイヴンの事を『パートナー』って呼ぶ事ってそうそう無いのよ。」



簡単な話だ。
何度か補佐担当に任命されたことがあると言うことは、よほどのことがない限り『その前に補佐していたレイヴンが居なくなったか、レイヴンでなくなった』ということになる。
死と隣り合わせの傭兵、それを何人も補佐している様な者が、いつ死ぬか分からないような人間を『パートナー』とは呼ばない。

少なくとも、彼女のようには。



「気を悪くしたらゴメンなさいね。まあ、そこのトコロも含めて、貴方となら平気かなーと思ったわけ。」

「…それはどういう…?」

「ほら、そうやって何人も担当が変わるって事は、やっぱりかなりドライになるわけでしょ? そういうのはちょっとつまらないし…。」

「そんな理由ですか…」

「初対面でそれ以上の理由を探せって言われてもね。」

そう口にするシス。しかし、こうして話すだけでも少し人物像は掴めたような気がする。
だが、まだあの試験結果や経歴など、個人として気になる事は多い。
なぜ、経歴が不明なのか。意図的にそれらを隠している人間は幾らか居るが、それにしても彼女には謎が多すぎる。

だからこそ。

彼女のことを知りたい。

エマ自身、そう感じていたのは紛れもない事実であった。

「それにさ。」

「?」



―――『パートナー』なんでしょ? 私達。



「…。」

『パートナー』。そう言われては仕方がない。
完全に信頼できるわけではない(これは彼女にしたって同様だろう)が、これから補佐をすることになる以上、こちらとしても彼女のことを知っておいた方が良いのは確かだ。
戦場でレイヴンをサポートするのに、戦術やアセンブリの傾向を知らねばどうしようもないのだから。

それに。


「…仕方ありませんね。」

「よろしい。」



何しろ初めて、私が個人でサポートする事になるレイヴンだ。
最初からドライになんてなる必要はないだろうし、私は彼女を知ってみたい。


「では、改めて。よろしくお願いします、パートナー。」

「ええ。」



「で、そろそろ決めて頂けます?」

「ああうんゴメンナサイすぐに決めるから!」

すっかり外野と化していた局員に急かされ、慌てて契約を済ませるシス。エマの案内もあり、その後のアリーナ登録や、業者への引っ越し先指定、その他諸々の手続きも滞りなく終了した。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「それで、荷物の方はどうでした?」

「上等。私達が到着するまでには運び込めるって言ってるわ。」

モノレールに乗って新中央区を移動する二人。既にミッションの依頼が来ているらしく、シスは携帯端末の画面を面倒臭そうに眺めていた。

「早速来ているみたいですね。…どうします?」

「…んー、今すぐにってことならパス。こっちにも準備は必要だし、旧都市区だとすぐには行けないしね。」

「とりあえず、向こうに到着してから詳しいデータを見てみましょうか。」

「そうしましょ。」

日も暮れつつある街並みを眺め、言葉少なにモノレールに揺られる二人であった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「ありがとうございました。」

18:30。家具の搬入を済ませた業者を見送り、部屋を見回す。
流石に値段を取るだけはある。
一人暮らしをするには贅沢すぎる広さだし、実際二人で使うにしても些かスペースが余る。
自分は元より、このシスという女性もあまり物を家に置かないタイプらしく、余計に室内が広い。

「ふむ。これから新生活、というわけですね。…おソバでも用意しましょうか?」

「何だかんだで楽しそうね…アンタ。」

「それ程でも。ところで先程の依頼ですが…」

「端末のセットアップも済んでるし、チェックしてみようかしら。」

慣れた手つきで端末を操作していくシス。どこかで触った事でもあるのだろうか、特に迷う様子は見せない。
しかし妙に渋い顔だ。

「…?」

「うーん、結構急ぎの依頼…かぁ…。どうする?」

「え? あ、最初のミッションですし、貴方に任せます。それより依頼の内容を。」

「オッケー。依頼主はクレスト、依頼内容は口封じ、って所かしら。」

「口封じ…?! み、見せてください。」







【ミッション概要】

ミッションコード:TACIT CLEANER

依頼主:クレスト

主目的:要塞NK-432『AI Fortress NK-432』を占拠している技術者の始末と施設の制圧。

作戦地域:旧都市区、要塞NK-432

想定敵戦力:地上ガードメカ×12、逆脚MT×1

報酬:成功報酬、10000c(ミッション遂行時間によっては追加報酬有り。)

契約期間:本日より二日間

                              以上。







概要、依頼文に目を通す。
なるほど、合点がいった。情報漏洩の可能性をできるだけ潰しておきたいという事らしい。物騒な言い方ではあるが、依頼内容は確かに口封じそのもの。

任命されて早々に、随分と真っ黒な依頼だ。
これならまだ市街地の武装占拠者を排除、などと言った依頼の方が気楽で良い。

「確かに、口封じというのは間違いなさそうですね。…引き受けますか?」

「今の所は他に依頼もないしね…ええ、契約しておいて。」

「分かりました。」

「やれやれ、夕食とシャワーの時間くらいは欲しかったわ。」

「…全くです。」

手早く準備を済ませ、軽口を叩き合う。
どうして。初めての依頼だというのに、こうも彼女は余裕なのだろうか。
なぜ、こんなにも緊張が解けているのか。

「……よく、分からない人ですね。」

「何か言った?」

「いえ、別に。」



ガレージの機体を輸送ヘリに固定し、作戦区域に向けて飛び立つ。
仲介人とのブリーフィング、作戦目標の最終確認。



《私は施設付近より貴方をサポートします。敵の情報と作戦領域のマップはこちら、施設への被害を最小限に抑えるため、ブロック間のゲートはこちらでコントロールします。》

「大丈夫なの?」

《ええ。急ごしらえという事もあって、相手の技術者も要塞全てのコントロールを奪うには至らなかったようです。》

なるほど。しかしこのパートナー、レイヴンの補佐担当が初めてというだけで、なかなかどうして。

「…意外と優秀そうだ。」

《聞こえてますよ。》

そして地獄耳、と。
コックピット内の状態は良好、計器にも異常なし。FCS、レーダーも正常に動作しているし、ECMの類も展開されていないようだ。



五月十日、21:00。



「じゃあ、始めましょうか。」



―――ミッション:進入者撃破―――



《ミッション開始。》



『 システム キドウ 』




―mission 002 [ FIN ]―
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